原作沿い 5巻、『弥彦の戦い』の後
───もうビクビクオドオドしないから…
そう言って薫と帰って行く燕の姿を、キョトンとして見送った。
「やったな、『弥彦ちゃん』。」
「『ちゃん』はやめろ!」
げらげら笑ってからかってくる左之助に怒鳴りつける。その時、思い出した。
(そういや…)
───勝って!勝って、お願い!弥彦『くん』!
あの時…確かに燕はそう言った。認めて貰えた…そんな気がして、嬉しかったんだ。
燕が赤べこに働きに来るようになったのは、弥彦が行くようになった三日後だった。
弥彦は最初、燕が苦手だった。
今まで自分と同じくらいの女の子…しかも気が弱く、大人しい性格の子などと接する機会がなかった。
正反対な性格の弥彦は、すぐに燕にキツイ言い方になってしまい、燕はますます弥彦にオドオドするようになった。
そのことも、無意識に弥彦は気になっていたのだ。
そして昨日…
古いしきたりに囚われ続け、涙した燕。
燕がああいう性格になったのは、あの幹雄とかいうやつらのせいだったのかもしれない…
家路につきながら、弥彦はそう考えた。
(明日からは、もう少し優しくしてやろう)
燕を自分が変えてみせる。
弥彦は強くそう誓った。
次の日。
20分も早く道場をでた弥彦は、途中で見知った姿を見つけ、驚いた。
まだ彼女の入る時間には相当早過ぎるはずだ。
「よお、燕。」
「あ…弥彦くん!」
弥彦『くん』。その言葉が弥彦の心を温める。
「どうしたんだよ、まだお前が来る時間にははえーじゃん」
「あ…あの、えっと…」
「…?」
再びオロオロしだした燕。しかし弥彦は静かに次の言葉を待った。
「昨日は…ごめんなさい、私のせいで」
「いーって。あれは俺が勝手に首突っ込んだんだから」
「でも…」
それでも直謝り続ける燕に、弥彦は小さくため息をついた。
「あのなぁ燕。いつまでもそんな顔すんな。俺はそんな顔のお前が見たくて戦った訳じゃねぇんだよ」
すると燕はキョトンとして俯いた。
「…ごめんなさい」
「ほらまたぁ!」
「…あっ…」
ハッとして、燕は慌てて口をふさぐ。
「まぁいいや、ほら、赤べこ行くぞ!」
「う、うん」
燕はそう頷いて2、3歩遅れで弥彦について来る。
そして赤べこが見えたころ、不意に燕が弥彦の袖を握った。
「あ…あの、弥彦くん、」
「…?何だよ、燕?」
「…ありがとう」
そう言った燕は弥彦が今まで見たことがない笑顔だった。
燕につられて、弥彦も笑顔になった。
「おう!」
Smile AgainEND
あとがき
スバルさん、お待たせ致しました!
6月中に仕上げたかったのですが…7月まで入ってしまってすみません…
大好きな5巻、弥彦の闘いのその後を想像して書きました。
あのあと、燕ちゃん明るくなりましたよね!
…ア、アニメ派の方でしたらすみません…
微妙に燕ちゃんのキャラが違うんですよね…
とにかく、楽しんでいただければ幸いです。
リクエストありがとうございました!
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