(8/10)page
Smile Again


原作沿い 5巻、『弥彦の戦い』の後





───もうビクビクオドオドしないから…

そう言って薫と帰って行く燕の姿を、キョトンとして見送った。

「やったな、『弥彦ちゃん』。」

「『ちゃん』はやめろ!」

げらげら笑ってからかってくる左之助に怒鳴りつける。その時、思い出した。

(そういや…)

───勝って!勝って、お願い!弥彦『くん』!

あの時…確かに燕はそう言った。認めて貰えた…そんな気がして、嬉しかったんだ。




燕が赤べこに働きに来るようになったのは、弥彦が行くようになった三日後だった。

弥彦は最初、燕が苦手だった。
今まで自分と同じくらいの女の子…しかも気が弱く、大人しい性格の子などと接する機会がなかった。
正反対な性格の弥彦は、すぐに燕にキツイ言い方になってしまい、燕はますます弥彦にオドオドするようになった。
そのことも、無意識に弥彦は気になっていたのだ。


そして昨日…
古いしきたりに囚われ続け、涙した燕。
燕がああいう性格になったのは、あの幹雄とかいうやつらのせいだったのかもしれない…
家路につきながら、弥彦はそう考えた。

(明日からは、もう少し優しくしてやろう)

燕を自分が変えてみせる。
弥彦は強くそう誓った。






次の日。
20分も早く道場をでた弥彦は、途中で見知った姿を見つけ、驚いた。
まだ彼女の入る時間には相当早過ぎるはずだ。

「よお、燕。」

「あ…弥彦くん!」

弥彦『くん』。その言葉が弥彦の心を温める。

「どうしたんだよ、まだお前が来る時間にははえーじゃん」

「あ…あの、えっと…」

「…?」

再びオロオロしだした燕。しかし弥彦は静かに次の言葉を待った。

「昨日は…ごめんなさい、私のせいで」

「いーって。あれは俺が勝手に首突っ込んだんだから」

「でも…」

それでも直謝り続ける燕に、弥彦は小さくため息をついた。

「あのなぁ燕。いつまでもそんな顔すんな。俺はそんな顔のお前が見たくて戦った訳じゃねぇんだよ」

すると燕はキョトンとして俯いた。

「…ごめんなさい」

「ほらまたぁ!」

「…あっ…」

ハッとして、燕は慌てて口をふさぐ。

「まぁいいや、ほら、赤べこ行くぞ!」

「う、うん」


燕はそう頷いて2、3歩遅れで弥彦について来る。

そして赤べこが見えたころ、不意に燕が弥彦の袖を握った。

「あ…あの、弥彦くん、」

「…?何だよ、燕?」

「…ありがとう」

そう言った燕は弥彦が今まで見たことがない笑顔だった。

燕につられて、弥彦も笑顔になった。

「おう!」








Smile Again


END



あとがき

スバルさん、お待たせ致しました!
6月中に仕上げたかったのですが…7月まで入ってしまってすみません…

大好きな5巻、弥彦の闘いのその後を想像して書きました。
あのあと、燕ちゃん明るくなりましたよね!
…ア、アニメ派の方でしたらすみません…
微妙に燕ちゃんのキャラが違うんですよね…

とにかく、楽しんでいただければ幸いです。

リクエストありがとうございました!