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もう放さないから


〜もう放さないから…〜

心臓が張り裂けそうなこの痛み……。

おそらく今日一日はずっとこの調子だろう…。

だって……今日は………



「綾音〜今日お誕生日だよね〜!」

「おめでと〜!」

「ありがと〜みんなぁ!」

……マネージャーの誕生日……

もちろん……知ってはいた。

でも…普段通り冷静を装い表情を崩さない。

今は……耐えるんだ……!!



1週間前〜〜

「大河ぁ〜!!」

「中村センパイ……どーしたんッスか、そんなに慌てて…?」

「いい情報を手に入れたのよぉ〜!」

センパイがニヤニヤと笑いながらその「いい情報」を聞かされる。

「た、誕生日…?」

「そうなの!来週の今日が綾音ちゃんの誕生日なんだって!」

「…………。」

「って……何でそんな無反応なのよ…?」

…俺にどうしろと?最初に頭に浮かんだことだ。別に誰だって「誕生日」はあるんだし、お祝いなら身内だけで……。だがそんなこと口に出せるわけがない。

「いや……急にそんなこと言われても…。」

「何言ってるのよ!」

センパイの両手が肩に圧し掛かり、前後に体が降らされる。

「アンタさぁ、綾音ちゃんが一番誰に祝ってもらいたいか知っているの!?」

「し、知りませんよ……。」

「綾音ちゃんは…「清水くんに祝ってもらったら……どうしよ…でも…私の誕生日知らないからなぁ……」って私の隣でつぶやいていたんだからね!!」

―――――ドキッ!

センパイの…言葉に心臓が反応した…特に自分の名前が出た時……。

「マ…マネージャー…が…?」

「あんな言葉を隣で聞いて黙ってなんかいられないわよ……大河、こうなったら早速「プレゼント」を用意するわよ!」

「え"っ……!?」

こうして…中村センパイの半ば強引に計画が始った……。

だが……日が進むにつれ、俺はセンパイの計画に呑み込まれていった。

何でだろう……まさか………

―――彼女の喜ぶ顔が見たいから…?

最初はその気じゃないのに…でも今は違う…

―――だって…マネージャーの…ためだから…。



放課後〜

―――ガラッ!

屋上の練習場…いつものようにボールを運ぶマネージャーの横顔…。

「あ………あの、マネージャー…!」

「なぁに清水くん?」

ニッコリと笑うマネージャーの表情…本当に…俺から…祝ってもらいたいの…?

「えっと……今日……さ……。」

ダメだ…目を合わせられない…。ふと横目で見ると……センパイがいた。

「(頑張って押すのよ〜大河ぁ!)」

そんな感じ…の表情でこっちを見ていたセンパイ。せっかくセンパイが…考えてくれたんだから…!

「部活の後…ちょっといいかな…?」

「うん…いいけど……?」

戸惑いつつも…マネージャーはOKしてくれた。ここまでは……順調…だ。

その日の練習は…いつもより気合が入る。

時間はあっという間に過ぎていった…。

「ねぇ……清水くんってばぁ…。」

彼女の困った声が背中越しから聞こえてくる…。無理もない…呼び出しておいて俺は早歩きである場所へ向かっている。

―――ガラッ!

「えっ…ここって…?」

着いたのは……教室。

それも…誰もいない、二人っきりの……。

「あのさ………。」

「清水くん……?」

俺は……両手をもぞもぞっとする。部活で汚れた手ではなく、ちゃんと手を洗って…小さな「贈り物」を包み込み…。

「マネージャー…いや…綾音…。」

「…えっ…/////」

マネージャーは……一気に顔が赤くなり目が見開いていた。まさかの「名前」で呼ばれるんだから…。

「…誕生日……おめでとう。」

薄っすらと笑みが出ていたかも…俺はそっと「贈り物」を両手で差し出した。

「えっ……なんで…知ってたの…?」

未だに…いや、さらに顔が赤くなったマネージャーを見て俺は…目線を逸らして…。

「……好きな人の誕生日ぐらい……知っててもいいじゃん。」

「……/////」

―――は…恥ずかしい〜!でも…センパイからの最も重要なキーワード「好き」を彼女に伝える……。まただ…またドキドキしてきた…。

「俺は……マネージャーが…綾音が……好きだ。」

ドキドキする心臓の鼓動を抑え、部活が終わったのに体中が熱い…というより火照っている。やっとのことで顔を上げると…マネージャーは顔を俯かせていた。

「…って、やっぱり名前は呼びづらいなぁ…マネージャーの方がいいかも…。」

「う…れ……し…い…。」

「えっ…?」

「清水…くん…に…こんな素敵な…プレゼント…もらえる…なんて…。」

彼女は泣いていた…でも悲しみの涙ではない…喜びの涙でもない…「ほっとした」優しい涙になっていた。

「いや…ちゃんと形のプレゼントもあるんだから…。」

「あ…そうだよね…!」

慌ててラッピングされた「贈り物」を開ける……。

「これって…………。」

女の子が欲しがる物…普段は全く無縁のこと。だから簡単なもの…だけど。

「ゴメン……小さなもので。」

「…ハ…ハンカチ…だぁ。」

小さな…オレンジ色のハンカチ…。俺がつけているリストバンドと同じ…そして、今この教室を照らしている夕日の日差しのような…。

「……すっごくうれしい……ハンカチも…そして……。」

マネージャーはニコッと笑って顔を上げた


「清水くんの気持ちも……!」

「…………。」

「だって………私も………ずっと……。」

ここからは…予想外だった…。

「清水くんが……好き……だったから。」

「えっ……?」

「ずるいよぉ……清水くんが先に「好き」って言うだから……。」

彼女の潤んだ目と上目で見てくる視線…やべっ……また、心臓が「ドキドキ」する…この気持ち…抑え切れない。

―――サッ

「えっ…///」

俺は……彼女を抱きしめた。もうダメだ……彼女が……綾音が…愛しい。

「もう………こうしてもいいでしょ?」

「……うん………。」

彼女の甘い声……耳に響く彼女の甘い鼻息…。感じるたびに…抱きしめる力が強くなる。

――――もう……放さないから。


end♪



海斗様からお誕生日記念にいただきました!

うはぁぁあw
素敵すぎる!!

めちゃくちゃ甘々じゃないスかぁw
私には書けませんね…!

すごく嬉しいです!
ありがとうございました!