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順番なんて関係ない!


シロうら







「…はぁ」

窓から差し込む光がポカポカと暖かいある日。
シロップは大きなため息をついた。
原因は彼の肩に寄り掛かって眠る少女、うららだった。



ちょうど10分ほど前。
たまった書類の整理を頼まれた二人は、黙々と作業していた。
お互い両想いであり、それを二人ともなんとなくわかってはいるが、まだ告白できていない。そんな微妙な関係だった。

特にシロップは、つい最近自分の気持ちに気づいたばかりで、うららにどう接したらいいのかわからなくなっていた。

(…この静さは気まずい…なんかしゃべったほうが…?)

などと考えていたときだった。
ふと左肩に感じた温もりと聞こえてくる規則正しい寝息。

「う…うらら…?」

「…すぅ……すぅ…」

「……」

最近仕事続きで疲れていたのだろう。
シロップは起こさないように作業しようとするが、やはりうららが気になって集中できない。

シロップはため息をついた。

信頼してくれていることが嬉しい一方で男としてみてくれていないのかと思うと、少し落ち込んでしまう。


ちらりとうららをみる。
こんなに近くでうららをみるのは初めてかもしれない。
顔にかかった金色の美しい髪を優しくはらう。

今、ナッツハウスには誰もいない…。

ゴクリと喉を鳴らし、シロップは吸い寄せられるように顔を近づけた。
触れるまであと数センチ…



パチリ



大きな黄色の瞳が目の前に現れ、シロップは硬直する。

「………!?」

「………っ!」

二人でまるまる10秒間見つめあったあと、シロップは真っ赤になりながら慌てて後ずさった。

(俺…今…何して…!?)

「シ…シロップ、」

遠慮がちにかけられた声に、シロップは飛び上がった。
うららと目が合った瞬間、顔から湯気がでそうなほど真っ赤になるシロップ。

「あ…あの今…」

ギクリ。シロップは赤くなったり青くなったり顔色を変えながら気まずそうにうららから視線をはずした。


「…キ…キス、しようと…し、たの…?」


そういいながら、うららもだんだん赤くなる。

「………」

謝ろうとシロップは口を開いた。

「ご「ごめんなさい」

…へ?
謝罪の言葉を遮られ、思わずシロップは間抜けな顔でうららをみる。

「…途中から…起きてたの…」

「え…起き…えぇぇぇえ!?」

(は…恥ずかし…格好悪い…)

穴があったら入りたい…
そう思いながらシロップはソファーに座り直した。

「ご…ごめん、…なさい」

「………ダメ」

「………」

(怒ってる…よな)

そりゃそうだ。寝ている間にキスしようとするなんて…
なんであんなことしたんだ…

先程の自分を呪いたくなる。

「…何も…」

「え?」

突然言葉を発したうららを、シロップは驚いて見つめた。

「何も言わないで…いきなりしないで…」

「………」

(えーと…それは…?)

微かに見えた可能性に、シロップは無意識に口元を緩ませた。

「うらら、」

「はい」

「…キス…していい、ですか」

「…はい」

照れたように頷くうららをみて、シロップは笑った。
そしてゆっくりと顔を近づけた──










「ねぇ、シロップ、」

「ん?」

「…なんか…順番ちがうよ?」

「………」



順番なんて、関係ないのです!
(大好き、です)





END