(9/10)page
鈍感な彼の台詞




「告白されたぁ?」

「おう。すっげえ可愛かったぜ〜」

自慢げに話す幼なじみを、薫は不機嫌そうに睨んだ。

「あっそ」

「あ、ちょ、待てよ清水!」

突然歩く速度を速めた薫を、吾郎は慌てて追いかけ、並んで歩く。

「なに怒ってんだよ、お前。」

「怒ってねーよ!ていうか、だったらなんでここにいんだよ。その子と帰ればいいじゃん」

「…なんだよ、妬いてんのか?」

「な…」

からかい口調で図星をつかれ、薫は赤くなりながら反論する。

「誰が…!!「断った」

「…へ?」

「だから、断ったんだって」

こともなげにそう言う吾郎を、薫はキョトンと見つめた。

「そう、なんだ」

「あぁ」

薫はホッとしたように笑みを漏らした。

「…でもせっかく可愛い子に告白されたってのに…なんでいつも断るんだよ?」

「べつに野球には必要ねえじゃん」

「そりゃそうだけど…でもやっぱさ、可愛い子が応援してくれたらお前だってやる気出るだろ?」

「何言ってんだよ、俺はもとからやる気満々だっての」

「ほぉー、そりゃ失礼しましたぁー」

「それに…」

突然言葉をきった吾郎を、薫は見上げた。

「俺からすりゃあ、どんなに美人なやつよりも、お前がいるほうがやる気でるけどな」

「なっ…!?」

吾郎の言葉に、薫の顔が再び真っ赤に染まる。

「あ?なんで赤くなんだよ?」

「赤くなんかねーよ!」

そしてまた薫はすたすたと歩き始めた。その顔は先程とは違い、笑顔だった。





END