「告白されたぁ?」
「おう。すっげえ可愛かったぜ〜」
自慢げに話す幼なじみを、薫は不機嫌そうに睨んだ。
「あっそ」
「あ、ちょ、待てよ清水!」
突然歩く速度を速めた薫を、吾郎は慌てて追いかけ、並んで歩く。
「なに怒ってんだよ、お前。」
「怒ってねーよ!ていうか、だったらなんでここにいんだよ。その子と帰ればいいじゃん」
「…なんだよ、妬いてんのか?」
「な…」
からかい口調で図星をつかれ、薫は赤くなりながら反論する。
「誰が…!!「断った」
「…へ?」
「だから、断ったんだって」
こともなげにそう言う吾郎を、薫はキョトンと見つめた。
「そう、なんだ」
「あぁ」
薫はホッとしたように笑みを漏らした。
「…でもせっかく可愛い子に告白されたってのに…なんでいつも断るんだよ?」
「べつに野球には必要ねえじゃん」
「そりゃそうだけど…でもやっぱさ、可愛い子が応援してくれたらお前だってやる気出るだろ?」
「何言ってんだよ、俺はもとからやる気満々だっての」
「ほぉー、そりゃ失礼しましたぁー」
「それに…」
突然言葉をきった吾郎を、薫は見上げた。
「俺からすりゃあ、どんなに美人なやつよりも、お前がいるほうがやる気でるけどな」
「なっ…!?」
吾郎の言葉に、薫の顔が再び真っ赤に染まる。
「あ?なんで赤くなんだよ?」
「赤くなんかねーよ!」
そしてまた薫はすたすたと歩き始めた。その顔は先程とは違い、笑顔だった。
END
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