『十四郎さんのそばにいたい』
ミツバにそう言われた時、嬉しかった。
惚れていたのだ、彼女に。
しかし俺は、ミツバを冷たく突き放した。
いつ死ぬか分からない俺なんかといると、彼女が苦しむだけだ。
そう思ったのだ。
歩きながら久しぶりに、ミツバが好きだった激辛せんべいをかじる。
相変わらずとても辛く、そして少し苦く感じた。
ミツバとの思い出が蘇り、
涙が出てきた。
「辛ェ」
俺は、残りのせんべいをミツバの墓に備え、安らかに眠っているであろうミツバに話しかけた。
ミツバ 元気か?
俺は――
いつの間にか、空には星が出始め、あたりを優しく照らしていた。
君に言えなかったことがある
好き / 君が好きだということ
END
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