本気じゃないと知っていた





※思春期的暗部テンカカでエロスに挑戦(玉砕)











「いいよ」
 と先輩は言った。
 僕の欲望を見透かすような目で、抱いてもいいよ、と。
 暗闇の中、きらりと紅い瞳が光る。
「な、に……を、馬鹿なことを 」
 こんな時に――と僕はかろうじて冷静を装った。いくら待機中とはいえ、いつお呼びがかかるかわからないというのに。
「物欲しそうな目で見てるくせに」
 先輩の、男の人にしてはやや細い長い指が僕の頬に触れ、それから、やけに整った顔がス、と近づく。
 それだけの動作に僕は体をびくりと硬直させて目を固くつむった。空気が、揺れた。
「ははっ、ちゅーでもされると思った?」
 ケラケラと笑う、明るい声。薄目を開けると、焦点の合わないほどの至近距離に先輩がいる。思わず体を引いたが、引いた分だけ先輩が迫ってきて、ついに僕の背中が地面についた。
 先輩は仰向けの僕に跨がって見下ろしている。その目がやけに熱っぽく、口元の笑みが妖艶で、妙になまめかしくて僕はごくりと唾を飲み下した。
 どうして僕はこの人に押し倒されてるんだ?
 頭がうまく回らない。目を逸らせばいいのに、つかまってしまったかのように目が離せない。僕の心臓はバクバクと煩く跳ねていた。
 ヤメロ――耳元に響く警鐘に逆らって僕は先輩に手を伸ばした。
「アンタが、ヤリたいだけなんじゃないですか?」
 この欲望は僕のじゃない、アンタのだ――だから僕は乗せられて流されるだけ、決してアンタが欲しいわけじゃない、と強がってみる。
「ま、そういうことにしといてやるよ」
 先輩は口の端に余裕の笑み。
 僕はその唇に噛み付くように吸い付いた。もう頭に血が上って、ここがどこだとか、僕たちが本来何をしているとか、そんなことはすべて吹っ飛んでいた。ただ無心でお互いの舌を絡め合う。
 不気味なほど静かな、真っ暗闇の空間に、卑猥な水音と二人の呼吸だけが響いた。






(100924)
これ以上先に進めない(書いてる人が)。
テンカカの基本は先輩の襲い受です。

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