01 たたく


※「ボコリ愛」お題







「ちょっとテンゾウ、そこ俺の場所」
 うつらうつらしていると、ベシッと頭を叩かれた。寝ぼけて顔を上げると、風呂から上がってきたカカシ先輩が立っている。ベッドで寝そべっていた僕は、先輩の居場所を作るべく、体を半分ずらした。
「どうぞ」
「どうぞ、じゃないよ、どきなさいよ」
 もう一度、先輩の手が降ってくる。
「先輩、暴力は反対です!」
 思わず叩こうとした手を避けると、先輩は面白くない、という顔をした。
「なぁによ、テンゾウのくせにー」
「僕のくせにって何ですか! って、ちょっ、痛っ、痛い痛い!」
 避けたのが気に入らなかったらしく、何度も叩かれる。本気で殴っているわけではないのだろうが、結構力が入って痛い。
「もー! 先輩!」
 僕はついに根負けしてベッドから立ち退いた。そこへ先輩が満足そうにゴロンと寝転ぶ。一緒に寝ようと再びベッドに乗り上げると、今度は足が飛んできた。
 危ない危ない、あわや顔面に喰らうところで、僕は慌て飛びのいた。
「ちょっと先輩!」
「んー?」
「僕も今から寝るんですよ」
「うん」
「入れてくださいよ」
「ヤ・ダ」
 先輩は頭から布団をかぶった。本気で占拠するつもりらしい。
「先輩、僕はどこで寝るんですか!」
 丸くなった布団を揺さぶると、手だけが出てきて床を指した。まさか、ごろ寝をしろとでも言うんだろうか。そりゃあんまりだ。
「ここは僕のベッドです!」
 強引にかけ布団を剥ごうとすると、先輩が顔を出してじろりと睨んでくる。
「もー何なのよ、テンゾウ!」
「そりゃこっちの台詞だ!」
「も〜〜〜寝かせてよぉ」
「僕も寝たいんです!」
「一緒に寝なくてもいいじゃなぁい」
「ベッドはひとつしかありません!」
「ソファで寝ろよ!」
「僕はソファなんか持ってない!」
「じゃあ、寝袋あるでしょ? それ持ってきて!」
「何が悲しくて自分ちで寝袋なんか……!」
 しばらくの攻防の後、大の大人が二人して取っ組み合っているのが馬鹿らしくなって、どちらからともなく手を離した。

「ったく、何なんですか、カカシ先輩」
「お前しつこいんだもん」
「は?」
「ヤらせろヤらせろって言うでしょ」
「は……」
 僕はそんなに言ってない。いや多少は言ったかもしれないが、そんなには言ってない、つもりだ、が。
「こっちは、んなに付き合ってらんないのよ。俺は寝たいの。静かに、平和に」
「はぁ」
「のに、お前がいると、何かゴソゴソやりだすでしょ。それがヤなのよ」
「はぁ」
 そんならそうと最初から言ってくれればいいのに。僕だって聞き分けのない子供じゃないんだから、嫌と言われたことをするほどがっついているわけではない。
 嫌なら泊まりに来ないだろうと思っているから、うちに来た時点でオッケーだとばかり思っていただけだ。
「ん? じゃあ先輩どうしてうちに来るんですか」
 まさか一緒にいたいだけ、とか殊勝なことを言うんですか? と聞いたら、思いっきり頬を叩かれた。バチィンと、クリティカルヒット。今度こそ本気でやったようで、打たれた場所がひりひりした。

 痛いんだけど、何故かニヤケ笑いが込み上げて止まらなかった。





(100930)
タイトル元→http://araya.ojiji.net/boko/bokoiodai.html



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