どこまでも


テンゾウの頭が、背中ごしにポンと俺の肩に乗った。

「なぁに、テンゾ」
「僕にはわかんないなぁ、と思いまして」
「何がよ」
「……サクラの気持ちがね」
「サクラ?」
「僕ならきっと、ついて行ってしまうと思うんです」

ずっと黙っていたかと思ったら、唐突な話題。
何のことだかわからない。

困っていると、テンゾウはおもむろに、言葉を選ぶようにして言った。

「たとえば好きな人が道を違えたとして、僕はその人がどこへ行こうが、きっと後を追うと思うんです。それがたとえ人を不幸にする道なんだとしても、その人が行くなら僕はどんなところへでも何をしてでも一緒に行きたいと思うんです。だからサクラはどうしてついて行かなかったのか……いや、それは正しい選択だったと思うんです。でも僕には理解できない。だからサクラが今何を思って里に残っているのか、どうも想像がつかないんです」

俺はそれらの言葉をかみ締めて、ようやくああサスケのことか、と思い至る。

「俺にはわかるよ」
「そうなんですか? それなら先輩は後を追わないんですか」
「追わないね」
「どうして? ずっと一緒にいたいじゃないですか」
「一緒にいる方が相手を苦しめることもあるよ」
「それでも僕は一緒にいたいです」

きっぱりと言い放つテンゾウに、俺の言っていることはエゴだ、と感じた。
追わないのじゃない、追えないのだ。
だって怖いじゃない。
何もかもを捨てて、世界がその人だけになってしまうことが。


サクラもそうか、なんてことは知らないけれど。

「誰?」
「え?」
「テンゾがそこまで追いかける人」
「あのねぇ、わざわざ言わせたいんですか」
「うん、教えて」
「わかってるくせに……」

わかってる。どうせ俺だろ。
だけど、そこまで言い切れるほどコイツは俺のことが好きなのかと思ったら、可愛げのなくなった男が何だか急に可愛く思えて、俺を好きだと言わせてみたかった。

「アンタ以外にいませんよ、そんな人は」
「ふぅん。テンゾーはそんなに俺のことが好きなんだ」

からかうように言うと、バシッと頭をはたかれた。
痛いなぁ、もう。
振り向けば顔の赤いテンゾウ。
照れ隠しにしたって何も手を出さなくてもいいのに。

「アンタのそういう所、僕は嫌いです」

むぅ、とテンゾウがむくれた。
そうやって素直に反応してくれるから、コイツは面白いと思う。

「嫌いでけっこう」

ぷい、とそっぽを向いたら、今度は腰に腕が回ってきた。
「うそ、好きです」
「馬鹿だねぇ、お前」
「あんたのせいです」






(2010/09/17~09/27の元拍手文)
テンゾばっかり先輩が好きみたいです。


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