どうしたらこの気持ちが伝わるんですか


「俺、さっきナルトに告白されちゃった。愛してる〜って」
「へぇ、それはよかっ…………え、ええっ!?」

 冷蔵庫に牛乳がないんだけど、と同じ淡々としたノリで言われ、一瞬何のことだかわからなかった。頭で反芻してみると聞き捨てならない言葉を聞いた気がして僕は振り返る。
 カカシ先輩は牛乳の代わりにミネラルウォーターを取り出していた。

「一体どういうことですか!? 告白!? ああああ愛してるって……」

 あのナルトからそんな言葉が出てくること自体想像がつかないのだが、そもそもナルトと先輩でどうしたら告白なんて展開になるのかわからない。二人にそんな雰囲気はまったくなかったのに。それとも僕の見落としだとでもいうのだろうか。そんな馬鹿な。僕は誰よりもカカシ先輩を見ていたし、顔にすぐ出るナルトのことだから、何かあって気がつかないわけがないのに。

「告白って……愛してるって……」
「んー、映画のチケットが二枚当ってね。なんてタイトルだったかなぁ。サクラと見てらっしゃいよって渡したら、うまくデートにこぎつけたらしくてね」
「は?」
「俺のおかげでしょ、って言ったら、『せんせー好き好き大好き愛してるー』だってさ。その程度で可愛いもんだよね」
「……それだけですか?」
「うん、それだけよ」

 はーっと長いため息が出た。
 僕は馬鹿か。そうだ、そんな馬鹿な話があるわけはないのだ。

「テンゾウ、今、変なこと考えてたでしょ」
「考えました」
「ヤメテよね」
「あなたこそ変な言い回しはやめてください」

 どうやら僕は先輩が好きすぎて、世界中の人間は僕と同じ気持ちでカカシ先輩を見てるんじゃないかと思い込んでいるような大馬鹿らしい。一瞬焦った自分をどうにかしてやりたい。

「結局ナルトが好きなのはサクラなんでしょう? そんなの『告白』なんて言いませんよ、先輩」
「愛してるーは告白でしょ」
「違いますよ。そういう軽いのは『ありがとう』と同じようなものです」
「じゃぁ、テンゾウの『好き』も『ありがとう』なわけ?」
「は?」

 先輩の展開に、僕はついていけなかった。どうして僕の話になっちゃうのか、わからない。

「お前もよく言うじゃない、先輩好きですーって。軽〜いノリで」
「えっ、軽いですか!?」
「ポンポン言われると、重みがないよね」

 それは結構、衝撃的発言だった。だって僕はいつでも真剣だ。好きだなんて冗談じゃ言わない。言わなくちゃ伝わらないだろうと思うから言うのであって、それをもしも冗談だと思われてたのなら心底心外である。ナルトのおふざけと一緒にされた日には本気で泣きそうだ。

「先輩、それはあんまりですよ!」
 あれほど言っているのに、僕の気持ちが伝わってないなんて、それこそ馬鹿な話だ。どういうことだ!

「ゴメンゴメーン」

 がくりとうなだれた僕の頭を、先輩が良い子良い子するように撫でた。ゴメンだなんて言っているが、それこそナルトの『愛してる』より軽いノリだろう。悪いなんて思ってもいないくせに。


 腹が立ってきたので、先輩を押し倒した。下が床だったけれど、かまうものか。先輩が頭をぶつけて「痛っ」と声をあげたが、知らん振りして口付けた。僕の気持ちは言葉じゃ伝わらないらしいから、こうなったら実力行使でわかってもらうしかないような気がした。




(101004)
地味にナルサクが好きなんです。


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