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※テンカカ半同棲シリーズ(全3話)
各話読みきり、最新から順に掲載。
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(※半同棲シリーズ 〜第三話〜)





「うん?」
 布団をめくると、中から見かけない本が出てきた。いや、見かけない、というのは嘘だ。僕の本棚に入っていないというだけで、それをよく読む人を僕は知っている。
「またか……」
 『イチャイチャタクティクス』。カカシ先輩の愛読書のひとつだ。先刻まで先輩がここで寝ていたのだから、忘れていったのだと考えるのが普通だろう。今しがた長期の任務で里の外へ出てしまったから、返すのはしばらく先になりそうだ。

 しかし、これはただの忘れ物ではない。何しろ先輩は僕の家に来るたびに忘れ物をして行くのだ。それは例えば替えのある忍具だったり、今日のように愛読書だったり、大事な物なんだけれど、必ずしも必要ではない、という物を忘れて行く。それも長期任務に出るという日に限って、何かを置いて行く。まるで忘れ物に留守番でもさせるかのように。そうして里に帰ってくると律儀に取りに来る。

 遅刻はともかく、あの慎重な人がそう毎回毎回忘れ物して行くのは変だ。先輩はそんなうっかりさんではないし、ついうっかりだとしたら反省がなさ過ぎる。だから、忘れ物はただの忘れ物ではなく、ちゃんと意味がある。それは、先輩にとって僕の家の鍵のようなものだ。

 忘れたのではなく、わざと置いて行く。ごめん、忘れた、と言って、また僕の家に来るために。

 来たいのなら来たいのだと素直に言えばいいものを、先輩は何か口実を作らずにはいられないらしい。理由なんぞなくたって僕はいつでも大歓迎なのだから、わざわざこんな面倒なことをしなくてもいいのに、先輩にはそれが出来ないのだ。

 まったく難儀な人だ。けれど僕は、いつも黙って忘れ物を返す。本当は素直に「ただいま」と言って欲しいのだけれど、それはあまりにも要求が大きすぎるだろう。そんなことを言った日には、素直になるどころか逆効果間違いなしだ。僕に意図を知られたとわかった途端、先輩は忘れ物をやめてしまうだろう。それでは困る。

 まさか先輩だって、こんなわかりやすい方法で僕が気づいてないと思ってるわけじゃないだろうが、それでも知らん振りをしてるのは、僕にも知らん振りをしていて欲しいからだ。先輩が黙ってろと言うのなら、僕は黙っておく。そういうややこしい人が、こうやって「また帰ってくる」という印を残していってくれる、それだけで僕には十分なのだ。


 手にした本を見つめていたら、思わず頬が緩んだ。ただの破廉恥な本だと思っていたが、今だけはカカシ先輩の身代わりのようで愛おしい気がする。僕はにやにやしながら、それを本棚の片隅にしまった。早く帰ってきてくださいね、という願いをこめて。

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ありがとうございました!

なんか恥ずかしい。
やっちまった感が否めません。


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