布団に潜っていると、思い出す。合宿の、夜のこと。

散々こき使った体が睡眠を要求しているのに、目を閉じても眠れないでいた。それは、隣同士の布団の、少し重なりあったその下で互いの熱い手をぴったりと合わせていたからだ。仲間の寝息が聞こえる部屋で、日向の掌を自分の掌で覆ったまま、見つめあうこともなく。このままふたつの手が融合してしまうんではと思うくらい長い間そのままでいた。そのうちに、日向は指を絡めてきた。俺はそれに応えた。
手を握り合ったまま、ごろんと寝返りをして、内側に体を向けた。すると、ぐっと引き寄せられたので俺は唇を固く結んだ。会話もなく、ただ暗闇の中で互いのやり場のない熱い体温を分けあって、目を閉じたまま。
日向は中途半端に思い切りがいいので、そのときも中途半端に二人の間には隙間があった。それがなんだか可笑しくて、愛しくて、ぎゅっと日向を抱き寄せたら、びっくりするほど速い鼓動を感じた。おんなじ。耳元を探って囁けば、同じように探られて額にキスを落とされた。くすぐったさに鎖骨の辺りに顔を埋めて笑うと、汗ばんだ肌から日向の匂いがいっぱいに広がった。
それから暫く額同士をくっつけて、その近眼の彼の眼鏡だって全く必要のない近すぎる距離に幸せを噛み締めていた。
畳の匂い、馴れないシーツの香り、微かな汗の匂い、そして日向の匂い。
このまま俺まで日向の匂いに染まることが出来れば、なんて、おかしなことを考えた。
何も言わず目すら合わせず、それでも満ち足りていて、その短いような永いような数分間、世界で一番とは言えずとも確かにとても幸せだった。
離れがたい、そう思っても離れないわけにはいかない。そのことがどうしようもなく悲しいことのように思えて、縋るように頬を摺り寄せあってキスをした。静かな、優しい空間に見守られて、そのままそっと手をほどいた。



布団に潜って、今日も日向を思い出す。あのとき重ねた手のひらから日向の匂いがするような気がして、胸の前で握り締める。
この指先に愛しい人が住み着いて、いつまでも離れない。















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130406
日月の日記念

目を合わせていたら、きっと切なさが溢れていた。













あのままじゃいかんと思ってリベンジ。
会話もなく探り探りキスをする日月ちゃんをご堪能ください

お粗末!