あくびをしながらシャツを着ていたらいつの間にか横にきていた先輩が、大きく開いた口に人差し指を入れてきていたので思わず目を見開いた。数度まばたきをする。
そのまま口を閉じるわけにもいかず(よっぽど銜えてしまおうかとも思ったけれどそれは流石に)、中途半端に口を開けたまま先輩の顔を見たら先輩はニヤリと笑った。
そして、僕の口から引き抜いた手をそのまま頭にのせてポンポンと撫でてくれる。
僕はまだポカンと口を開けたまま、少し視線を上へずらす。火神くんがこっちを見下ろして不思議そうな顔をしていた。その目が訴えているのはきっと、僕が伊月先輩に訊きたいことと同じものだろう。
僕もわかりません、と伝える意を込めて首を傾げたら、図らずも2人同時に同じことをしてしまった。

そんな数秒の出来事をバッチリ目撃していた小金井先輩が吹き出して、
「何やってんの伊月、オレそんなにびっくりしてる黒子見るの初めてかも」
なんてお腹を抱えて笑いながら言うので僕はやっとここで口を閉じた。開きっぱなしだったのを忘れていたのだ。
伊月先輩も僕のアホ面は貴重だったと笑うので、だんだん恥ずかしくなってくる。
腹いせに、周りにつられて笑い出した火神くんの脇腹にチョップをお見舞いする。君も相当なアホ面してましたからね。ムスッとしたまま呟いたら伊月先輩がごめんごめんと再び頭を撫でてくれた。いつもの優しい笑顔にふわっと心が和らぐ。単純だなんて言われなくてもわかっている。バスケと先輩限定だからいいのだ。
ぽんぽんと頭を軽く叩かれたので顔をあげると伊月先輩は僕の目を覗き込むように少しだけ首を傾げた。

「ここ最近黒子疲れてるみたいだったから、ちょっと元気出してもらおうと思って。」

早く帰って早く寝ろよと付け足して、またニッと笑うものだから元いた場所に戻ろうとするその背中に思い切り抱きついてしまった。

ちょっと慌てつつも受け入れてくれる柔らかな体温に、もうこのまま眠れると呟いた。










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121105

ちょふさまのみお持ち帰りOKです!
リクエストありがとうございました!

お母さんみたいに優しくて気遣いの出来る伊月君にきゅんとしちゃう黒子が甘えまくる
ということでしたが
お母さん……ん?お母さん?でひと月悩んでこのざまです
ちゃんとリクエストに沿えたか甚だ不安ですが、ちょこっとでも楽しんでいただけたら幸いです