※大人な2人
※ナチュラルに同棲
※細かいことは気にしない






日曜日の午前11時30分。もそもそと起き出して牛乳を一杯。あー寝汗がー。リビングのクーラーの電源を入れて温度設定26度。それなりに節電。ピタッとドアをしめてカーテンを閉じる。和室の襖はいつも日向が生真面目に閉めているから問題なし。
とりあえず自室に戻って着替えを取り出す。あ、バスタオル……は共用なので和室の箪笥に服を脱ぎながら取りに行く。パンツだけでほっつき歩いているといつも日向に怒られるけど今はなぜかいないので遠慮なく脱ぐ。

脱いだものをそのまま洗濯機に突っ込んで風呂に入る。寝起きの顔にぬるま湯をかけて、それから段々とシャワーの温度を上げていくのが一番目覚めがいい。

寝汗を流してスッキリしたのでジャージを着てリビングへ。クーラーで冷えていて火照った体にちょうどよかった。
髪を乾かすのが億劫で、しばらくぼんやりと椅子に座ってカーテンの模様を眺めていたら、ガチャガチャと乱暴に鍵が開けられた。日向だな。出かけてたのか。足音を響かせて一直線にリビングに入ってくる。
「おかえりー」
「起きてたのか」
「うん、11時半頃な。風呂入ってきた」
「髪乾かせよ。あー涼しー」
汗を拭きながら床に座る日向から受け取った袋を、台所に持っていきながら訊く。
「そっちの袋は?」
日向が持ったままの濃いピンク色の袋の中身が気になったのだ。
「あ?ああ、パン。昼飯に」
「お、やった」
日向が買ってきた豆腐やら卵やらを冷蔵庫に入れていく。あ、コーヒーゼリー。
「お前よく昼まで寝てられるよなー」
テーブルにパンを並べる日向は呆れたような顔をしている。
「最近寝てなかったからさ」
「まーそうだけど。ちゃんと寝てちゃんと朝飯食って運動する。これが健康の…」
「はいはい日向はいくつになっても口うるさいよね、明日からは一緒にランニングできるからいいじゃんもう」
早く起きてランニングして、朝ご飯を食べて一緒に家を出る。これが2人で決めた2人の日課。それを最近守れなかったのが日向は少しご不満の様子。
「オレはお前を心配して、」
「それより早く食べよーぜ」
小言は聞きたくないので遮った。小さなテーブルを挟んで日向の向かいに座る。
「いっただきまーす」
元気よく言いながらきんぴらサンドを掴…
「あ、それオレんだから」
…む前に日向がひょいっと持って行ってしまった。
「えっ、ちょっと待てよひゅーがっ」
「寝てたやつは余りもん食えー」
「ひっど!オレのお気に入りなの知ってて……!」
「言ってろ。オレはこれを食う」
「あ、ああぁぁ」
嘆く俺を横目に日向はムシャムシャ食べてしまった。くそう。こうなったら反撃あるのみ。
「そんなにオレが日向に構ってなかったのが寂しいの?」
「は、はあ?」
「そうやって拗ねちゃってさ、小言も言うし」
「いや、」
「オレに嫌がらせして楽しい?よかったね、オレに構ってもらってー」
「うざっ」
無意識に無自覚に拗ねている日向は本気で返答してくる。予想通り。ここからが本命なのだ。
「オレが忙しかったの知ってるくせにさ、酷いなあ」
「あのな、」
「オレだってもっと日向と話したかったのに」
「え」
「当たり前だろ?せっかく一緒に住んでんのにさ」
むう、と睨んでやると目を逸らされた。ちょっと照れてるときの癖だ。俺はさらに続ける。
「もっと喋りたいしランニングだって、ご飯も買い物も、手繋ぎたいし一緒に寝たいしキスだって、それに」
「あーあーあーあー」
やめろ、と言ってチョップをしてくる日向の眉間の皺が大変なことになっている。残ったらやだな。
「悪かった、ちょっと拗ねてたかも」
目を合わせないようにしながら認める日向。よし勝った。ふふ、と堪えきれずに笑う。
「何笑ってんだよ」
「んー、嬉しくて?」
「なんだよそれ」
日向はそう言って立ち上がって、牛乳を取りに行く。戻るときに窓辺のラジオに電源を入れてきた。ちょうど曲が流れ始めるところだったようで、DJが曲名とアーティストを読み上げる。洋楽だった。このジャンルに疎い俺でもわかる有名な曲。
「あ、洋楽のようだ。」
「黙って食え」

一曲終わって、DJがサビの歌詞の和訳を読んで感想を言う。僕は君を愛するために、か。それまで黙っていた日向が少し居住まいを正す。
「オレ、日向が好きだよ」
もそもそしたメロンパンを飲み込みながら、なんとなく言いたくなって言ってみた。突然の告白に、服についた食べかすを摘んでいた日向がパッと顔を上げた。細い目が割と大きく見開かれる。そして一呼吸置いて、柔らかい笑みを浮かべ、
「知ってるっつーの。ずっと前から」
なんて小突いてくるから俺の頬は真っ赤になってしまった。




君と僕とのある夏の休日



「後で夕飯の買い出し一緒に行こ」
「んー、そうだな」
「あ、なんなら夜は俺にしとく?」
「それもいいな」
「日向のヘンターイ」
「冗談、一緒に買い物な」
「うん。それがいい」








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120719


同棲、始めました。シリーズ化する予定
彼らの職業は不明です
伊月に幸せになって欲しいと思った先の妄想

リビングには台所と和室がくっついている。で、その空間と廊下を仕切るドア。それを背にして見ると、廊下の両側にドアがいくつかある。
一番手間が脱衣所兼洗面所。洗濯機アリ。風呂場がその奥に。
二番目は便所
で、伊月の部屋、日向の部屋と続く。

作中の洋楽は知る人ぞ知る、です
"I was born to love you."の歌詞の