▼中学生日向と伊月。
02/15 19:38(0

※捏造過多注意!


帰り道、日向はずっと黙っていた。
みんなも、ぽつぽつと呟く程度で、別れの挨拶もそこそこに一様に俯いて帰っていった。
そりゃそうだ、最後の試合がこんなに早く来るなんて思ってなかった。まだ蝉が鳴いていて、試合直後に見た空は無情に青く輝いていた。
みんな無理に笑おうとしいて、そして何も言わない日向を見て口を嗣ぐんだ。

とうとう最後に二人残されて、やっぱり何も言わないまま歩く。
俺は日向の半歩後ろで、踵の擦りきれたスニーカーをぼんやり眺めていた。

もうすぐ別れ道。ふと顔を上げたら、丁度日向が足を止めた。
表情は、見えない。
ジリジリと夏の終わりを告げる蝉の声がやけに大きく聞こえた。

むわりと風が吹いて、日向の短い髪が揺れたとき、彼の声が俺の名前を呼んだ。
ともすれば、葉の擦れる音に掻き消されてしまうような、無理に押し出されたような声だった。

無言で次の言葉を待つ。
俯いたままの日向とは目が合うことはない。

随分、黙っていた。だんだん暗くなっていく空の下、たった二人きりで、向かい合いもせずに。
少し目線を下げた。
この三年間で、日向の肩は俺より僅かに高い位置までになっていた。頼もしかったはずのその肩がやけに薄く見えて、唇を噛んだ。

カラカラ、と自転車が一台通り過ぎた。
それを見送った日向は、意を決したように拳を一瞬強く握った。息を飲んだ。心臓がドクリドクリと音を立てた。聞きたくない、直感がそう言っていた。
それでも、日向は振り向かずに言ってしまった。重く静かな声だった。

「なあ、伊月、俺…バスケ、やめようと思う」

「……」

何も言えなかった。息すらしていなかったかもしれない。黙っている俺に、日向は滅茶苦茶変な顔をして、こう言った。

「グレてやっからな、みてろよ、バスケなんか、もう二度とやらねーから、髪だって伸ばして、グレてやっからな!」

たぶん、本人は笑ってるつもりだったんだろう。下手くそだ。出会ったときから、日向が嘘を吐くとすぐわかるのだ。声ばっかり、元気なのだ。
泣きたいくらい喉の奥が熱くなって、でも涙は出なくて、代わりに、日向よりずっとうまく笑ってみせて、そうか、って言ってやった。おかしいくらい、小さくて震えた声が出た。

二人並んで、もう少し歩いた。やっぱり無言で、自分の爪先を見ていた。
いよいよ道が二つに別れたところに立った。
日向は軽く手を上げて、立ち止まらずに先へ行こうとしていた。その背中に、声を掛けた。

「俺は、続けたいと思うよ」

日向は足を止めたけれど、振り返りはしなかった。
それでも俺は伝えなければならないと、そう思った。

「あいつらと、日向と、やってきたこと全部が無駄なことだとは思わない。俺は、日向とやるバスケ、大好きだった。」

日向がほんの少しだけちらを見た。

「…好きなだけじゃどうにもならねえんだ」

そんなことわかってるよ、とは言わなかった。たぶん日向もわかって言っている。だから、あの日言ったことをもう一度口にした。あの、初めて日向とバスケをした日の言葉を。

「バスケ、楽しかった?」

「……当たり前だろ、ダアホ」

日向はそれきり黙って、それから前へ向き直った。

歩き出した日向の背中を、見えなくなるまで見つめていた。










ちょっと書いてみた……
どうしても書きたかったんですよ…

捏造すみませんでしたー!



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