▼いつか同じ場所に
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夏合宿の降旗くん




あ、やばい、これはマズい、そう感じた瞬間、フリ、声を掛けられて、ゼェ、脇腹を抑えながら振り返ると、背筋のピンと伸びた伊月先輩が横に並んだ。息も絶え絶えに返事をすれば、苦笑混じりの口元が「頑張れ」、そう音を漏らした。ゼェ、ゼェ、喉が張り付くように乾いていて、声が出ない。なんだってご飯の後にこんなに走るんだ。そろそろ色々逆流しそうだけど、なんとか唾を呑み込んだ。はい、なんとか答えたのは、果たして返事として認識されたか危ういが、それ以上の声を出すには胃の中身まで出さなきゃならないような気がして諦めた。鉛を引き摺っているように重い足を懸命に動かし続ける。先輩はさらに言った。吐くともっと辛いから、頑張って。背中をポンと叩かれて、ハッと顔を上げ横を見るが、先輩は少しスピードを上げて、どんどん前へ進んでいく。去り際に、まあ昨年やらかしたから言えないんだけど、なんて笑う声がして、口の端がむず痒くなった。顎を引いて背筋を伸ばして、あの後ろ姿を真似るように、しっかり拳を握った。きっと追いついてみせる、そう気持ちを込めて。


そのあとすぐに、先にダウンしていた黒子の元へ真っ青な顔で向かったのだけれど。任せてください、そう言える日は、まだまだ先だ。

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