▼暁 またしてもパロディ
12/25 05:03(0

※暁とか書いたがただの赤月。
※美大のような雰囲気パロディ
※絵描き赤司とモデル伊月の話
※変態。誰だろうコレ…状態。



30分。

それだけ伝えて一輪の百合の花を手渡すと、美しい彼はチラとこちらを伺った。

服は?
下だけ。
花は?
食べる感じ。
目線は。
やや下。


無闇に広く白い空間で静かに響いた声も、すぐに冷たい壁に吸い込まれていった。裸足で、ひたりひたりと百合を片手に歩く彼がカーディガンを放った。途中で邪魔になったのか、無垢の花びらを軽く唇に挟んで両手でYシャツのボタンを外していく。中にシャツを着ないのは効率性のためだと前に聞いたことがある。Yシャツがするりと肩を滑り降りて、両腕から抜けていく。すとん、静かに足元に被さった。
ぴったりした黒いスラックスの腰回りをかなり際どいところまで下ろして、それから気を張る様子もなくゆったりとポーズを取る。百合の花弁を千切り山吹色の花粉を唇に乗せ、それこそ全部食べてしまうのではと思わせる動作で微かに前歯を見せた彼は突如動かなくなる。サッ、鉛筆が画用紙の上を走った。

濃厚な百合の匂いが、静謐な部屋を侵していく。



気がついたら白黒写真のようなものが目の前に存在していて、まただ、ため息をついた。カラン、コロロ……。鉛筆が指をすり抜けていった音がやけに大きく響いた。
それでも彼は動かない。死んだように、いや、生きていないかのように、動かない。心臓だってそこに収まっているはずだ、瑞々しさに溢れた淡く色付く若い肌は作り物にはない柔らかな質感であることをこの距離でも伝えてくるのに、それでも彼から生を感じられない。だからこそ際立っているのは毒々しいほどの黄色い花粉。てらてらと光る柱頭にベッタリついた花粉は、真っ赤な唇の上にかかった黄色い粉より生々しかった。花のほうがよっぽど性的だ、彼の体を何百と鞣(なめ)してきた瞳は捉える。

新しい画用紙を用意して、再び鉛筆を構える。美しい曲線を描く後頭部を、項を、額を、頬を。少しずつ明瞭に、少しずつ脚色を加えて。ぜったいに、これだけは。秘密にしなければならない自分だけの彼。自分だけが創り出せる彼の姿。雌しべにすり寄る葯のような自分の浅ましい思考に吐き気を催しながらも夢中になって鉛筆を走らせる。きっと彼の涙は真珠、舌は、唾液は。絹のような髪が乱れた様を夢想して、丹念に書き込んでゆく。鎖骨、肩、腕、腰。その下は。ところどころ浮き出た骨が、薄い皮の下で動くのを想像しながら、白魚が跳ねるのを連想する。目を閉じればありありと思い描ける無垢の裸体を、薄汚れた画用紙の上で汚していく背徳。今朝方起き抜けに突きつけられた十字架や、街中に溢れていた賛美歌に胃の辺りがカッと熱くなったのを思い出す。今日は何の日だ、ああなんて神の冷たいことか。画用紙の上の妄想の汗に、自分の汗がポタリ、重なる。
30分なんてとうに過ぎた。それでも微動だにしない彼は、いつまでも僕を見ることは無い。













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またしても変態やらかした。ごめんなさい。果てしなく楽しかったです。シリーズ化したい。設定を途中で入れるつもりが蛇行運転。のち変態路線へ切り替え。

赤司くん片思いになっちまった。前もそうでしたね。あっちゃー。それにしても切実などろどろの恋心です。赤司くんらしくない?ね!!うんごめん

聖なる日の背徳がBLの醍醐味じゃないすか。だからこんな感じになったわけだが。もっと2人らしさが出るような展開で第2話考えます。んでは、よいクリスマスを!

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