▼中途半端に高月
09/26 19:29(0


伊月さんが言うには『あまり知らずに育ったから』らしいがこれはあまりにも出来なさ過ぎだと思う。始めのうちなんかは「ダメだってば!」とか「もっとゆっくりやってよ」とか色々言ってきたけれど、もう1時間くらい前から唇をキュッと結んでひたすらたどたどしく指を動かすことに集中している。眉間に寄った皺がなんだか新鮮で見つめていたら、その表情がなかなか見れないムキになった顔だということに気がついた。かれこれ数時間続けているわけだが、そろそろ首から腰にかけて背中全体が痛くなってくる頃だ。
ちなみにテレビゲームの話である。

「伊月さーん」
「んー……?」
「そろそろやめません?」
「ん、もうちょい」
「さっきからそればっかなんですけど」
「ちょっと話しかけないで、ぎゃっ危ない危ない」
「話しかけないでって…」

軽くショックを受ける。しょぼーんとうなだれて、ふらふらと立ち上がる。何か飲んでリフレッシュしなきゃ駄目だなこれは。ついでに伊月さんも休ませないといけないし。考えをめぐらせながら台所に入ると、ちょうど妹がオレンジジュースの最後の一滴を喉に流し込んでいるところだった。慌てて冷蔵庫を開ければそこに飲み物と言えるものは水しか入っていなかった。くそー!と妹の両頬をムニムニ抓る。きゃーいづきさーん!と一声叫び、パタパタと逃げ出した妹は真っ先にテレビの前のソファへ向かっていく。俺はため息を一つついてそれを見送り、戸棚からチョコパイを取り出した。



「お兄につねられたの!」
「酷いねー、お兄ちゃんは」
「ねー、いづきさんに構ってもらえないからってさー」
「え、そうなの?」
「えっ、そうだよ?」
「こーら、勝手なこと言うな。あと伊月さん横取りしない。いくら可愛い我が妹でも許さないぞー」

チョコパイを皿に積み重ねている間に妹は伊月さんにベッタリくっついているわ、伊月さんはゲームの電源を落としているわで、なんともやるせない気分になる。
ソファのサイドテーブルに皿を置いて、背もたれ越しに伊月さんを後ろから抱きしめつつ妹にデコピン。早く伊月さんから離れなさい。だが妹はしぶとかった。薄々感づいていたが、伊月さんは妹のお気に入りだ。この面食いめ、ここまで兄に似なくてよろしい。

「伊月さん、俺よりゲームとか妹ちゃんに構ってるほうがいいんですか」
「ほら!拗ねてるって言ったでしょ?」
「黙らっしゃい!」

後ろから抱きついたまま髪を弄れば妹が得意そうにそれを指差す。そうですよ拗ねてますよ、女の子っていつの間にかこういうことに敏感になるから困る。これじゃあ迂闊に恋人だって連れ込めない。ああもう、じれったい!







続かない!妹ちゃん捏造申し訳ない!

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