2 幸運



「やっぱりか…」
「ボクの幸運も底をついたみたいだね」
「運…というより行くのが遅かっただけだと思うんすけど…」


私は今日はクリームパンにしようと思っていた。
しかし既に遅く、売切れていた。
しょうがないからチョココロネにする事にする


「お、ナナシじゃんか」
「あ、日向と七海」


呼ばれて後ろを向けば七海と日向。

「その様子じゃ欲しかったパンが無かったのか?」
「うんまあ、クリームパンが欲しかったんだけどね…」


喋りすぎたお陰で売り切れ

「なら僕の作りたてのパンはいるかい?」
「あ、花村」


花村が突如現れた。
花村は私と同じクラス。
花村のつくる料理は本当にほっぺたが落ちそうな程に美味しいらしい。

時々花村は趣味で学園で何かを作っているらしいんだけどまさか食べる事が出来るとは…


「生きててよかったな…」
「そんな誉められちゃうと僕の息子まで喜んじゃいますなぁ」


何故か花村は鼻血出してハァハァしてる

「…花村さん、鼻血出てますよ」


天海は安定の王子様対応。
花村にポケットティッシュを渡している

「丁度私の作ったパンも出来たわ」
「あ、東条さん」


花村の後ろから出てきたのは東条さん。
彼女は超高校級のメイドでなんの仕事もやりこなす。
彼女の作る料理も花村に劣らないくらい美味しいらしい。

だからしょっちゅう二人で料理のバトルしてるみたい。


「ボクは本っ当にツイてるよ!ましてはこの超高校級の2人達のパンが食べれるなんて…!後でくる不幸が怖いよ!」
「また始まったね」


またそういう事を言う狛枝に呆れて私はそう呟いた

「いつも狛枝はこうだもんな」


と、日向も。

「…まあ私はこういう所、嫌じゃないよ」


七海はそう言う。
七海の言う事に私は賛成だ。

確かに狛枝は変な人だけど、狛枝が変な人なのはいつもだしむしろ変な人じゃなくなったら逆に怖い。


「…なんか、俺邪魔者っすかね?」

天海は気まずそうにそう言う

「邪魔じゃないよ、天海だって私達の大切な友達だし…」
「え、本当すか」


天海はあまり表情に出してはいないが驚いていた

「なんだよ今更、お前だって俺達の友達だろ?」


と、日向は明るく言う

「…私、勝手に天海と仲が良いって思ってたんだけど…違かった?」
「いや、ちがくないっす…ありがとうございます」
「じゃあ改めてよろしくだね」


そう狛枝が言うと天海は微笑んだ

「おーい、皆ー僕の事忘れてないかな?」


と、花村。
正直忘れてた


「あれ…いたの?」

と、七海。


「酷いよ!ほらほらパンも冷めちゃうから冷めないうちに食べてよ!」


ずいずいと沢山のパンが乗ったトレーを押される
沢山のパンの中には私が食べたかったクリームパンがあった。
私はクリームパンに手を伸ばしてクリームパンを頬張った

「…美味しい…!」


思わず感動してしまう。
パンのが丁度よく甘過ぎず、それに香ばしい。
中に入っているクリームは濃厚で、でも重すぎず食べ飽きない。


「でしょ?僕の作った料理が毎日食べたいのなら僕のお嫁さんになればいいよ!」
「お嫁さんはちょっと…私には早いかな」

毎日食べてたらいつか太っちゃうしそれにお嫁さんは考えたことないから丁重断った。

「あ、本当だ美味しい…なんてボクはツイてるんだ…!」


皆声を揃えて美味しいと言った。


「ナナシさん、教室で話したいつも見ている夢の事なんすけど…」
「ああ、そういえば。…で、天海はいつもどんな夢見てるの?」
「…ナナシさんが出る夢っす。」
「え、私?」

「多分ナナシさんは可愛いからいつも俺、目が離せなくてだから夢の中でも出て来たんすかね?」
「なにそれ…」


天海はさらりと恥ずかしい事を言う。
不意にも私は照れてしまう。
勝手に顔が熱くなってしまう。


「あ、照れてるっすね」
「う、うるさいよ…」


知っている。
天海は私の事を妹として見ているからそう言っていることを。


「本当にナナシさんは妹みたいで可愛いっす」

ほら、やっぱり天海は私の事を妹だと思っている。
まあ、私も天海の事を面倒見の良いお兄ちゃんだと思っているし。


「これから天海お兄ちゃんって呼ぼうかな?」
「…それはちょっと…」


天海は照れたのかそっぽを向いた。
天海の照れるポイントが未だに分からない。

私たちが話している間にいつの間にかトレーの上にあったパンは全部無くなっていた。

まだクリームパンしか食べていないのに…
まあクリームパンだけでも充分お腹はいっぱいだけど。


「…皆美味しそうに食べてもらって本当にありがとう。こっちまで幸せになったゃったよ。」

花村にしては珍しい言葉。
いつもは変態発言するはずなのだが。


「珍しい事も言うんだな」

私が言いたいことを日向が言った


「いやいや僕は僕だよ!珍しいって酷くない?!」

私の思う花村が戻ってきた。

「私が作ったパンもあるんだけどいかが?」


七海達沢山食べてたけど食べれるのかな?
そう思った瞬間に東条さんの作ったパンの香ばしい匂いがした。
この匂いで七海達はまた食欲をそそられたみたい。

私は東条さんのパンを頂いた。
皆もパンを頂いていた。

パンを食べている間に時間は一刻と過ぎていき、いつの間にかチャイムがなってしまった。
私たちは花村と東条にお礼を言って教室へと戻る事にした。
日向は七海と。
私は狛枝と天海と。

それぞれの教室へと戻る。


「…あー…沢山食べた…太らないかな?」
「じゃあ、食べたあとだけど太らないように授業サボって運動でもする?」
「それいいねー」


狛枝の案に私は同意した。
別にここは希望ヶ峰学園。
選ばれた生徒達は才能を更に開花するべく生活するのみ。

私は授業嫌いだから毎日サボってやらなくちゃいけない事をしたいんだけど
皆との時間が少しだけ惜しくて授業に出ている。
まあ、天海に怒られちゃうからでもあるんだけど。


「今動いたら多分吐くと思うっすよ」
「そう言われてみたらそうだね」


…確かにそうだな…
話しているうちに眠くなってきた。


「…んー次の授業サボるねー」
「なんでいきなりそうなるんすか」
「だって眠いし…じゃ、私専用の作業部屋に行ってくるねー…」


天海は溜息をついた
あ、多分怒られそう。
狛枝はいつも道理にニコニコしてるし


「じゃあ俺もサボるっす。俺も眠くなってきたところだし」
「え?」


これは予想外だった。
天海は性格顔もイケメンだと思っていたのだが違かったみたいだ。


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