間違ってないよな?2(日向創)


「日向…くん?」


ミョウジは俺を心配して顔を覗き込んできた


「やめておいた方がいいと思いますよ」


と、急に俺の前に現れたのは白い髪の色をした青年。
制服をみると本科の生徒らしい


「は?なんだお前」


と、男の集団の一人が言い出す


「こんなことしたら退学ですよ?せっかくの希望の先輩たちなのにもったいない…!それにそろそろ学園の見張りの人が来る頃だし」

「は、はあ?」

「退学になってほしくないからいっているんですよ先輩」


ほら、と白い髪の色をした青年が言うと丁度いいタイミングで警備の人が来た


「おい何しているんだ!さっさと寮に戻れ!」


男集団は舌打ちをしていってしまった
俺は目の前にいる白い髪の毛の生徒に礼を言おうとしたが


「…キミらさぁ、本科の生徒を巻き込まないでくれる?」


言葉を遮られてしまった


「巻きこんだのはあっちだろ?」

「…はぁ…流石予備学科、僕が言いたい事分かってない。僕が言いたいのは予備学科のくせに本科の生徒に易々と触れるなって言ってるんだよ」

「…なんだよ、それ…」

「そこの女子生徒だってキミが最初から守れば誰もまきこまなくて良かったじゃないか…!キミは最後まで何も出来なかったんだよ」

「…助けてくれたのはありがたいけど日向くんをそんな風に言わないで!私の大切な友達なの!」


と、ミョウジは言ってくれる


「これだから予備学科は。予備学科同士の友達ごっこなんてうんざりだよ」


そんなに才能がない奴が悪いのか?
才能がなけりゃなんの力を持つことも出来ないのか?


「才能がない君たちにはなんの力も持てない。つまり変な希望を抱くのは無意味だってことだよ」


…なんだ最初から簡単なことだ
最初からプロジェクトに参加すれば良かったんだ


「…分かったよ…才能があればいいんだろ?」
「日向くん…?!」


ミョウジは凄く驚いた顔をしていた


「ははっ、まったく君は才能を舐めすぎだよ。才能は生まれつき持ったものなんだ、そんな簡単に手に入れられるわけがない。」

「…お前には関係ない」

「も、もうやめよう…こんな時間だし…」

「ははっ、じゃあ僕はこれで失礼しようかな?」


その本科の生徒は歩いていってしまった。


「…大丈夫?日向くん」

「…俺は大丈夫だ、お前こそ大丈夫か?何があったんだ」

「…いきなり本科の生徒に囲まれて襲われて…脱がせようとしたのかカッターで私の制服を切ろうとしたから逃げてて…」


そう語るミョウジの肩と声は凄く震えていた


「で、でも!日向くんが来てくれたからもう大丈夫だよ」

「…震えてるじゃないかまだ怖いんだろ」

「これはちょっと寒いだけだよ、日向くんがいるから本当に今は大丈夫だよ!」

「…ごめんな、俺が才能を持っていればお前の事をこんなに傷つけさせなかったのにな、俺はお前すら助けられなかった、さっきだってあの本科の生徒が来なかったらこうなっていなかった。…だから、俺はなんにも出来ない弱いやつだ…」


「日向くんは弱くなんかないよ、もっと自分に胸を張ってよ、七海ちゃんだってそう言ってたでしょ?…それに私は日向くんが本当に来てくれて良かったと思ってるよ、今だって一人だったらもっと震えていて何も出来なかったかもしれない。でも、日向くんがいるから心強いんだ。」

「…ミョウジ、でも、それでも俺は…」
「カムクライズルプロジェクトなんかに乗らないでよ」

「っ…!」


ミョウジには勘づかれていたみたいだ。


「そんなくだらない計画なんかに乗って私達を置いていくの?!私だってプロジェクトの一人だけど最初はそのプロジェクトに乗るつもりだったのに日向くんと七海ちゃんのせいで乗りたくなくなっちゃったんだよ!責任取ってよ!…なのに、日向くんがそれに乗ろうとするなんて…許さないんだから…!」


ミョウジはそれを言いながら涙を零していた。
俺はくだらない自分の判断でミョウジを泣かせてしまった。


「ミョウジ、ごめんなお前達の事全然考えていなかった。ごめんな…」

「…日向くん」


ミョウジは涙を拭うと俺の手のひらに何かを渡した。
確認してみると黄緑色の何かのカケラみたいな形をした小さくて綺麗なキーホルダーだった。


「…これ、貰っていいのか?」


ミョウジは小さく頷いた


「七海ちゃんが作ってくれんたんだけと…日向くんのは昨日出来たばっかりであげるの遅くなっちゃって私に渡して置いてって言われて、今思い出したの。私も七海ちゃんに貰ったんだ」

「そうだったのか…ありがとな」


俺は何となくだが七海はきっと俺たちの友情の証としてこれを作ったのだろうと思う。

この時もう俺は勝手にプロジェクトに参加するとか考えないようにしてカムクライズルプロジェクトをきっぱりと断ろうと決心した


…つもりだった。


あれから1年後、もう俺たちは2年生になった。
放課後は七海とミョウジでゲームしていた。

…今日という放課後は違う。


ピーポピーポー

救急車のサイレン、騒ぐ周囲の人達。
学園のすぐ前の道路に一人の女子生徒が血塗れで倒れていた。
俺は何だろうと思って人混みの中から顔を覗かせた。


「…え…?」


その女子生徒は


ミョウジ


だった。
見間違い?そうだ、見間違いだ。
去年俺を励ましてくれて、大切な友達で、そして俺の想い人で…
そんなミョウジが死ぬわけなんてない。
ありえない。


「…え、ミョウジ、ちゃん…ミョウジちゃん!!」


俺のあとに続いて人混みから覗いた七海が倒れている女子生徒に向かって走っていった。


「やめて!はなしてよ!なんでミョウジちゃんが!なんでよ!」


その七海を止める警官たち。
違うよ七海、その女子生徒はミョウジなんかじゃない。
違う女子生徒だ。
例えそうだとしてもきっとこれは夢なんだ。
悪い夢だ。


「ねえ!日向くん!」


そう七海に呼ばれて俺は現実に返った気がした。


「ち、違う、それはミョウジじゃなくて…だとしてもこれはきっと夢で…」

「現実だよ」


俺にそう言ったのは去年の助けてくれた白い髪の本科の生徒。


「ねえ、あの子みたいに倒れてる女子生徒に駆けつけないの?そう現実逃避するのもいいけどさ、その現実を受け止めないと倒れてる女子生徒が可愛そうだよ?」

「…うるさい、黙れ」

そう俺が言うもののその本科の生徒は話を続ける

「あの感じじゃたぶんあの倒れてる女子生徒は何か大切なものを落として拾おうとして轢かれちゃったのかな?」


…大切なもの?
もしかして…

それを聞いて俺は倒れてる女子生徒に駆けつけた
駆けつけた途中に警官に捕まりそうだったのだが、振りほどいてすぐにその女子生徒の元へと行った。


その女子生徒の手には何かのカケラのようなキーホルダーが大切に握られていた。
この女子生徒…いや、ミョウジはもう既に息はしていなく、後ろの頭部だけを打ったみたいで身体は大きな外傷を負っていない。

きっと後部からたくさんの血が出ているのだろう。


俺の姿を見た七海を拘束していた警官が呆れたのか七海の拘束を解いて、自由の身になった七海が急いでこちらに駆けつけてきた。


「な…んで…こんなもの拾うために…死ぬなんて…ばか…ミョウジちゃんはバカだよ…ミョウジちゃんのバカ…!」


七海はミョウジがキーホルダーを大切に持っている手を強く握って泣いた
俺の目からは知らないうちに大量の涙が落ちていた。


「…また俺はミョウジを助けられなかった…」


才能を持っていない俺はまたミョウジを助けられなかった。
やっぱり俺には才能が必要なんだ。
ミョウジを助けるには才能が必要だったんだ。

このあとさらに警官が増えて俺らはあっさりとミョウジから離された
離された俺はただただずっと突っ立っていた。

七海はベンチに座って泣いていた。


「…日向くん、どこ行くの?」

「…俺にはやらなくちゃいけない事があるんだ」


それを七海に言い残して俺は学園長の元へと向かった。
…もう決心はついた。
才能が無ければ誰も助けられないんだ。

この先もしかしたら七海も助けられないかもしれない。
でも才能があれば大丈夫。

…なあ、この俺の判断は間違ってないよな?
そうだろ?ミョウジ



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