(声)

僕が彼女の声を、歌を聞いた瞬間「羨ましい」と思った。大変羨ましいと思ったのだ。僕も彼女のように歌えたらと思ったのだ。
聞いただけで胸が締め付けられるような、奥底にしまっていた感情をすべて上に持っていかれそうになるような、不思議な力が宿った特別な、安い例えしか浮かばないけど、天使の声みたいな、そんな声を心底羨ましいと思った。
僕は彼女のように歌えないと思った。だから羨ましいと思ったのだ。

(男の子と女の子)

 寒いね。寒い、寒い。と私が言えば、寒いなら寝ろよ。寝れば何にも感じねぇだろ、と貴方は言ったけど、寝てても感じるものなのですよ。
隣に貴方が居ると居ないとでは、全然違いますの。
だから、ね。

(側に居てくださいな。)





(誰か)

ください、ください。

ください、ください。半分ください。
ください、ください。ちょっとでもいいです。
ください、ください。嘘、ほんとは全部欲しいです。
ください、ください。愛をください。



(誰かと誰か)

 好きだ。そのたった三文が言えない。根性無しと自分に言う。
「私が先に言いましょうか?」
彼女が首を少し傾げて言う。何をとは言わなかった。

(男の俺に言わせてよ!)


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