笑い笑かすお仕事してます。
芸人している本間と南阪を中心に。

(本間と南坂/創作)

「頭割って死ね」
「ちょっとちょっと、南坂君?顔に似合わず、何恐ろしい事を口走っているのかね?」
「うるせぇ。黙れ。喋るな。息止めてそのまま死ね。」
「何をそんなに苛々してんの?」
「…」
「なんか言われたの?」
「…」
(…言われたのね)
 とりあえず、さっき貰ったスタッフさんからの差し入れのお菓子をそっと南坂の目の前に置いてやった。
 舌打ちが聞こえてきたけど、少し経つとゆっくりお菓子に手を伸ばしてモソモソ食べ始めた。
「苛々している時には甘いモノだな」
「…うるせー」
「…うまいか?」
「…うまいよ」

(甘いモノをどうぞ)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
漫才をしている本間君と南坂君。
苛々スイッチやネガティブスイッチが入ると手に負えない南坂君。そんな南坂君の扱いに慣れているのが本間君。


(南坂と成瀬/創作)

 本間実とはよく解らない男だ。何年も一緒にいて、本間本人に『俺の事を一番理解している男』だと言われている俺でさえ、正直よく解らないのだから、他の奴らが本間実を理解すると言うのは不可能なことのはずだ。
 なのに、回りの奴らは、まるで本間の全てを理解しているかのように近づいてくるのだ。それが、ムカつく。俺だって、理解してないのにお前らなんかに本間の何が解るんだと言う話しであって、決してこれは、ヤキモチだとか、独占欲だとかいう話しでは、ない。(だいたい、男が男にヤキモチとか無いだろ。)
「いや、それ、完全なるヤキモチだよ。南ちゃん。」
 酒を片手に笑う成瀬くんを睨みつけるが、まったくもって、意味がない。頭がふわふわして睨み付けるような険しい顔が出来ていないのだ。
「なんでだよ」
「酔っ払いに話したって解らないでしょ?」
「酔っ払ってなんかないやい」
「酔っ払いでしょ」
そう言うと、また成瀬くんは笑った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
成瀬くんは、南坂くんの同期(でも年上)の飲み仲間。今日も南坂くんの愚痴を聞いてあげるのです。



(本間と南坂/創作)

 今隣には南坂がいる。真っ暗な部屋で男二人並んで一つの画面を見ている。図柄でもあまり美味しくはない状況だ。何を見ているかというと、まぁ、あの有名な鮫が人を襲いまくるパニック映画の再放送を見ているわけだ。ちょうど、冒頭にある女の人が夜の海で鮫に襲われている場面だ。
「南坂」
「あ?」
 なんともおっかない返事が返ってきた。これは余裕が無くなっている証拠だ。映画開始数分で、南坂はこの様だ。さすが意地っ張りのビビりさん。無意識に、俺の方に寄ってきているのにも気付いていないだろう。
「怖い?」
「何回見ていると思っているんだ。」
 と、凄い顔で睨んできた。確かに、この映画は何回も再放送だってしているし、レンタルもした。何回も見ているが、毎回、南坂は同じ場面で同じ様に怯えている。
 無理に見なくてもいいのに。そう思うが、言わない。文句を言われるのは分かっているし、なにより、隣にいる南坂の反応を見るのが楽しい。正直に話せばそれこそ、南坂が激怒するだろう。




(南坂と本間/創作)

 本間が寝ていた。やっと仕事が終わって、安心したんだろうな。楽屋に一足先に戻っていた本間が机に突っ伏して寝ていた。
「あー、俺より先に寝やがって、腹立つ。」
 俺だって疲れてんのにな。二人とも寝てしまったら、尚子さんが呼びに来ても気付けないじゃないか。どちらかは起きていないと駄目なわけで、つまり俺は寝てはいけないのだ。
「後でジュース奢らせよう」
 本間と向かい合う場所に腰を下ろした。本間の目元には隈がある。俺にも同じぐらいの隈がある。お揃いだ。二人して隈つくって働いて、おかしいや。隈が出るぐらい仕事を貰えるなんて、感謝するべきものだけど、疲れるもんは疲れるのだ。
「…やっぱり晩飯奢らせよう」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
仕事を貰い始めた頃。
尚子さん=マネージャー



(本間と南坂/創作)

 寝てしまえば良いのに。目の前に座って睡魔と戦っている男を見て思う。右手にはしっかりシャーペンが握られている。今にも、開いているノートが散らばっているテーブルに頭を打ち付けそうで、なんだか、危ない。
「南坂、まだ明日もあるから、今日は寝たほうがいいぞ」
「うるせー、」
「うるせーって…」
そんな覇気のない声で言われても。
「だいたいなぁ、オマエがな、悪いんだ、ぞ」
「なんで」
「ずっと、な、俺の相手もしないでよ、誰かとずっと喋ってんだもん。」
 なんとまぁ、可愛い事を言ってくれるではないか。しかし、それは今、南坂が睡魔と戦いながら、ネタ作りに励む理由にはならないし、俺のせいである理由にもなっていない。相当、眠いらしい。
「んー、ごめん」
「ごめんで済んだら警察いらねぇよ」
「じゃあ、どうすればいいのさ」
 眠いっていうか、この絡み方は酔っ払いではないだろうか。厄介だ。
「あした、ずっと俺に構え」
「 はいはい」
「いや、やっぱり、明日、オマエは俺の奴隷な。ベビーカステラ買って来いよ。あと緑茶買え。んでもって肩揉め。飯はオマエが用意しろ。布団を干せ。掃除しろ。洗濯モノも片付けろ。DVD借りて来い。あれ、海外ドラマのな、つまんないやつ借りて来たら屋上からダイブな」
「…」
「あ?おい、返事」
「…ハイ」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ネタ作りを担当している南坂には頭が上がらない。



(咲坂と南坂と本間)

 南坂と本間は面白い。何が面白いかというと、なんと言い表せばいいのか解らないが、ただ単に、今まで二人のようなタイプが俺の周りにはいなかっただけだからかもしれない。もちろん、一人、一人も面白いのだが、二人一緒にいるとより面白い。二人を見ていて、飽きることはなかった。
今もこうして、楽屋の端っこでネタ合わせをしている二人を眺めている。俺から見て右側にいる南坂に左側にいる本間。先輩の俺に気を使っているのか、中々稽古を始めようとしなかった二人に声をかけてやっと先程稽古を始めたばかりだ。まだ気を使っているのか声は小さい。
「気にすることないからなぁ」
さりげなく声をかけてみたら、まず勢いよく南坂が振り返ってきた。続いてゆっくりと本間が振り返る。南坂は慌てて、困っているような顔をしていた。逆に本間は落ち着いていて、キョトンとした顔をしていた。二人のこのギャップがまた面白い。俺は二人をみてくすりと笑った。

咲坂さんの観察日記

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咲坂さんは先輩芸人の一人。
101416



(本間と南坂)

「こんな所で終わる気なんて、ないよ」
 「南坂は違うの?」と真っ直ぐな目を向けられた。思わず逸らしてしまいたくなる。でも、逸らしては駄目だ。それは、こいつを裏切る事と同じ行為だ。だから、真っ直ぐ相方を見つめ返した。バカみたいに真っ直ぐなその瞳。嫌になってしまうぐらい真っ直ぐな瞳だ。
俺はおまえみたいには、なれない。だけど、おまえの隣にいても、恥ずかしくないように、俺はそうありたいと思う。
ふぅ、と息を小さく吐いた。また、こいつに目を覚まされたようだ。
「ちょっと弱音を吐いただけだよ。ばぁか」


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