Hit plan | ナノ

指先まで君に染む

まつり様リクエスト
「愛を喰らわば君まで」続編



戦闘はそこそこ出来る方だ。
その辺の雑魚海賊なんかに負けない程度には。

海賊暮らしが長いから真っ白美肌って訳にはいかないけど、そこそこ美人の部類に入る方だと思う。
自分で言うもんじゃねェって、我が16番隊隊長様にいつも言われてるけどね。

そんな私の新たな弱点がその16番隊隊長、イゾウ…隊長だ。

捨て身の誕生日プレゼントのお陰か、あれよあれよという間に味見をされ…一応両思いってやつで、それはもちろん望んでた事なんだけど…



「カナ、何やってんだよ…」
「何って、見て分からない?」
「分かりたくねぇっての」

今日も私は、元気にイゾウ隊長から逃げている。

「せっかく両思いだってのに、何が不満なんだよ」
「サッチ隊長にこの微妙な女心が分かる筈がない」

想いが通じたら通じたなりに悩みは有るし、そもそも恋する女子の悩みは尽きないのだ。


バン!と少し乱暴に扉の開く音がした瞬間、サッチ隊長が僅かに緊張したのが見えた。

あぁ、今日は早かった…

「カナー?」
「はいぃっ!?」
「何で毎度サッチの所に逃げやがる…」
「ほら、サッチ隊長って匿ってくれそうっていうか?」
「いや待て待て!俺は何もしてねぇ」
「イゾウ隊長…」
「あ"?」
「イゾウ…たいちょ…」
「何だって?」

や、やばい…
完全にお怒りモードだ…

「……」
「…俺を見たって助けねぇぞ…?」
「サッチにしては分別があるじゃねェか。諦めなカナ」

ズルズルと引き摺られながら食堂を出て行く私を見る家族の目が生暖かい。
たまには誰か助けてくれたっていいのに!

「じゃれてる様にしか見えねぇっての…」




一直線にイゾウ隊長の部屋まで連行された私に、もはや逃げ場は無かった。

…嫌じゃないよ?
むしろその逆で、でもいざ恋人って立場になった途端、どんなを顔したら良いか分からなくなってしまった。
それと…

「イゾウ隊長ー?」
「…何度言ったら分かる?そろそろ返事しねェぞ?」
「うー、無理ですよぅ…呼び捨てとか…」

そう、これが最大の原因。
イゾウって呼び捨てなんて、恐れ多いというか…恥ずかしい…絶対に無理。

「なァ、カナさん」
「…へ?何ですそれ。気持ち悪い」
「だろ?じゃぁ分かるよな」
「何か少し違う気が…そのうち、いつか呼べる様にきっとなるはずだから!今は見逃して下さい、ね?」

元4番隊の悲しい性か、ついついサッチ隊長仕込みの全力土下座をしてしまう。

「まだ4番隊の気分が抜けねェみてェだなぁ…」
「そんな事はない…デスヨ?」

黒いオーラを感じてゆっくり顔を上げるとそこには、完全にスイッチが入ってニヤリとしたイゾウ隊長の顔。

「16番隊の色にきっちり染め直してやるから、覚悟しろよ?」
「や、ちょっとイゾウ…たいちょ、」

ばたばたと全力で抵抗するも虚しく、私の身体はあっさりとイゾウ隊長の下に組み伏せられる。

何でいつもこんなノリからそういう展開になるんだろう?
たまにはちょっとくらい、ロマンチックな空気とか欲しいのに…
はぁ、本当に悩みは尽きない…

「考え事とは余裕じゃねェか」
「…イゾウ隊長の事を、少々…」
「少しじゃ無くて、全部にしときな」

この余裕たっぷりで自信に満ちて、少し意地悪な発言にいつも私は絡め取られる。
本当はイゾウ隊長の事で頭がいっぱいだけど、認めるのも流されるのもやっぱり何だか悔しい。

「…今はダメですってば…あ、」

良いタイミングで、カンカンカンとけたたましく鳴り響く鐘の音。

「ちっ…」
「…やった、敵襲!今日ウチですよね!?行きましょ、イゾウ隊長!」

素早くイゾウ隊長の下から抜け出し、今度は私がイゾウ隊長をぐいぐいと引っ張って甲板へ向かう。


この状況から逃げられるなら、敵襲でもマルコ隊長のお説教でも何でも良かったんだけど。
やっぱり根っからの海賊な私は、戦闘が好きだ。

しかも今は、イゾウ隊長と戦える。
こんな幸せな事って他にない。


「…ふふ、イゾウ隊長の後ろ気持ちいです」
「下はもっと気持ちイイだろ?」
「あっぶな…誤射するかと」
「ククッ…余所見すんなよ?俺より戦果上げたら何でも言う事聞いてやるから、頑張んな」
「やったぁ!イゾウ、私頑張るね!」


思わず駆け出した私は、知らない。
イゾウ隊長が敵も引くくらいの笑顔だったなんて。

「あの単純な所が、堪んねェよなぁ…。ま、カナが俺に敵う訳ねェけどな」

fin.

リクエスト内容:愛を喰らわば君まで続編で、ちょっと悪どいイゾウさん。
ありがとうございました!


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