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袖を引く無意識の癖

by ginger さま

「イゾウ…………………さん」


一瞬の静寂の後、店の中は大爆笑。


「やっべー、わんのカナちゃんの真似うめぇなー」
「でしょでしょ?」
「確かに、カナなら言いそうだよい」


イゾウの誕生日パーティーの次の日から、カナは二人きりなら名前を呼ぼうと頑張っていた。
しかし、勢いで呼んでみて恥ずかしくなって真っ赤になって、ついついさんをつけてしまう。

そして、俺は『やりなおしだな』って名前を呼ばれるのを黙って待つ。

黙っているのは口だけで、目や口元からはいじめたくって仕方ないというオーラが漂って、いや、だだ漏れになっているぞーってサッチに言われた。
てめぇどっから見てやがった。

開店前からカナと店に寄った時、買い忘れたとかでサッチとわんが出かけた時も同じようなやり取りをしていたんだが、その様子をこっそり見ていたのがわんだった。

ったく、いつ帰ってきたんだか。

声をかけるタイミングを逃して困ったなという表情は、次第に面白いものを見つけたと変わっていき、しっかり観察していった。

その結果がこれだ。


「もう!わんちゃん!」


プンスカ。

そんな感じで怒るカナの様子は、可愛らしいからな。

皆で微笑ましいと笑っている。
決して馬鹿にはしていない。

仕方ないよな、可愛いんだから。


「うー。イゾウさん」


どうやら本当に困っているらしい。

【袖を引く無意識の癖】

自分からはなかなか触れてこないカナにくいくいと引っ張られたから、助け舟を出すことにした。


「もうその辺にしてやんな」
「はーい」

title by 恋するブルーバード

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