Truth | ナノ

  17.共感と理解




「・・・なんて綺麗な青…」


降り立った揺らめく青の美しさに、思わず手を伸ばしそうになる。

「あ…触って大丈夫ですか…?」
「構わねぇけどよ…リリィはその、何とも思わねぇのかよい?」
「何がです??」
「いや…何でもねぇ」

そっとその青に触れると…何だろう、羽の感触とも違うし熱も感じない。
それより何より、これがマルコさんだと云う事が目の前にしても尚信じられなかった。

「本当に綺麗…ありがとうございますマルコさん」

そう言うとふわっといつもの姿に戻ったマルコさんは、何だか凄く複雑な顔をしていた。


「だからリリィは大丈夫だって言ったじゃねェか」
「ぷぷ…マルコの顔。傑作だな」
「リリィ、リリィ!」
「ん?は?…ええっ!?」

呼ばれて振り返ると、そこにはマルコさんと同じ様な…でも赤い炎を指先に灯したエースが居た。

「エースも…?」
「ああ、でも俺のはちゃんと熱いから触んなよ?」
「マルコさんのとは違うの?」
「俺はメラメラの実を食った炎人間だからな」
「メラメラの、実?」
「そう、全身炎になれるぜ。今やったらマルコが怖えからやんねえけどな!」
「まだよく分からないけど…これが悪魔の実で能力者って事?」
「そういう事だ。詳しくは後で説明するとして…マルコ、どうだった?」

あ、マルコさんは偵察帰りだった。
邪魔しちゃって悪い事したな。

「問題ねぇよい。かなり武装しちゃいるが只の商船だねい」

話しながら歩き出したみんなの後に続く。


"悪魔の実のオークション"とか"能力者の犯行"なんて新聞記事を見たけど―
凄いな、鳥になったり炎を出したり…

あ、そうか"不死鳥マルコ"って…

「リリィ」
「あ、はいっ?!」

食堂に戻り、サッチの淹れてくれたコーヒーを手にアレコレと辻褄を合わせていたら、マルコさんの少し真剣な声に呼び戻された。

「全然驚いてねぇが…怖ぇとか不気味だとか、思わなかったのかよい?」
「何でです?だって、マルコさんもエースも綺麗でしたよ?」
「いやまぁ、こっちの人間にだってそういう反応する奴はごまんと居るからよい。日の浅いリリィなら尚更じゃねぇかとな…」


マルコさんの複雑そうな表情の理由が少し分かった気がした。
何処の世界でも、優れてたり特別だったり少数だったり――そういう人に対する世間の目ってやつは変わらないんだ。


「マルコさんは、優しいんですね」
「は?」
「私はその能力者じゃないので、マルコさんやエースの気持ちが分かるとは言いませんけど…そういう人が居る"事実"を理解をする事には、何の躊躇いも抵抗も無いですよ。だって、能力者でもマルコさんはマルコさんですよね?」


いろんな人が居る。
性別も国も仕事も立場も思想も宗教も――

気持ちを全て解ってあげられなくても、"自分と違う"という事が存在を否定する理由にはならない。

それに――

「みなさんも、私を受け入れてくれたじゃないですか。最初からここに居るマルコさんより『違う世界から来た』なんて私の方がよっぽど得体が知れなくて怪しいのに、です」

「………」


気付いたら周りは静まり返っていた。
もしかして私、偉そうにおかしな事を言ってしまった…?


「…リリィ!俺リリィ大好きだ!!」

エースの声が静寂を破ると、いきなり後ろから誰かに抱え上げられた。そこはいつの間に居たのかジョズさんの肩の上で、下を見ると少し目を赤くしたマルコさんがサッチに頭をぐしゃぐしゃにされていた。
いつもなら即反撃するのに何故かされるがままのマルコさんに、ジョズさんに担がれた私に向かってぴょんぴょん飛び跳ねるエース。

「…あの…ジョズさんこれは…?」
「俺も能力者だ。オヤジもな。リリィの言ったのは、俺たちにとって何より有難い気持ちで言葉だ」

「ありがとう」とジョズさんに言われ「私の方こそありがとうございます」とお礼を言っていたら、ポツリとイゾウさんの声が聞こえた。

「ったく…思ってた以上に大した女だなリリィは」


褒められた、気がした。

この状況を作ってくれたのは、イゾウさんなのに。
私なら心配ない、大丈夫だと、イゾウさんがそう言ってくれたから。


今度は外で肩車して貰う約束をしてジョズさんに降ろして貰い、出来る限りさり気なくイゾウさんの隣に座った。

「イゾウさん」
「どうした?」
「信じてくれて、ありがとう」

「宴しようぜ!」とはしゃぐエースと、漸くいつも通りにサッチのリーゼントを掴むマルコさんを見ながら静かに。

でも心は、イゾウさんに向けて。


「馬鹿、出来過ぎだリリィ」


イゾウさんが今どんな顔をしているか…見なくても想像がついてしまった。

だって私の後頭部を撫でた手が、優しくて暖かかったから。


「あ!イゾウずりい!俺にもやらせろよ!」

全力で飛びついて来たエースを支えられず、椅子ごと派手に転倒してしまったけれど、

「いっ…だ…」
「おいリリィ!?」
「エース…肩!炎出てるからっ」

痛くて熱くて嬉しくて楽しくて、少しだけ涙が滲んだ。



こんな素敵な世界

今まで知らなかったなんて
これから沢山知れるなんて


海賊船?
欲張りな私にぴったりだ

だってここは、宝の山


最初に手に入れた物は、素敵な家族
次は――



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