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  16.青に逢う




陽が高くなり、帰船した家族の増えたモビーはいつもの賑やかさを取り戻しつつ有った。


もぐもぐとランチのパスタを食べながら、向かいで同じ物を食べるイゾウさんをじーっと見る。

「俺の顔に何か付いてるか?」
「…イゾウさんとフォークって、何度見ても不思議な組み合わせだなぁと」
「お前さんにそれを言われるとはな」

クククッと噛み締める気のない笑いを遠慮無く溢された。
いや確かに、出来はともかく顔立ちはイゾウさんと似た系統ですけど…

「リリィはいちいち面白ェな」
「イゾウさんはいちいち笑い過ぎです」

負けじとふふっと笑い返す。
こんな些細な会話ですら幸せで仕方が無い。

「随分と楽しそうじゃねーの」
「あ、お帰りなさいサッチ。釣果どうだった?」
「釣果って…女の子がそんな言い方すんなっての」
「じゃあ…」

更に突っ込んだ聞き方をしようとしたら、バタンと少し乱暴に食堂の扉が開きエースが駆け込んで来た。
その勢いに、皆の視線が一気に集まる。

「…なんだ、マルコいねえのか」
「どうしたエース、何か有ったか?」
「見張りが沖に不審船見つけたんだ。マルコに見に行って貰うのが早ぇと思ってさ」
「自室じゃねぇの?呼んで来いよ」
「わかった」

イゾウさんとサッチは少しだけ厳しい顔で踵を返したエースの背中を見送ると、すぐにいつもの調子で各々一服点けた。

「ま、俺らが動く程の事じゃねーな」
「マルコに任せりゃ問題ねェだろ」
「大丈夫なんですか?」
「心配いらねェよ。それよりも…」

急に真剣な顔になったイゾウさんが、私の目をじっと見据えて何かを言おうとしていた。

「…何ですか?」
「リリィは"悪魔の実"や"能力者"って言葉は知ってるな?」
「新聞や本で何度か目にしただけですけど…」

マルコさんに聞く機会も今までに無くて、それがどの様な物なのかは、文字からイメージする事以上には分からなかった。

「…付いて来な」
「おいイゾウ…!?見せんのかよ?」
「リリィなら心配いらねェよ。遅かれ早かれなら、早い方がいいだろ」
「…ったく、マルコにどやされても知らねーからな」

止むなく、といった様子でサッチが立ち上がったので、慌てて後に続く。
少し緊迫した感じの二人のやり取りに、緊張が走った。

「大した事じゃねェからそんな固くなるな。リリィなら大丈夫だ」
「…はい」

何処に行くのか分からないけど、イゾウさんが言うなら、きっと大丈夫。


意を決して出た甲板は、一角にエースを囲む輪が出来て居る以外は特に変わった様子も無くて、拍子抜けしてしまう。

「あれ、マルコさん居ないんですね」
「もう偵察に行ったんだろ。待ってりゃ直ぐに戻る」
「行ったってどうやって…?」
「まぁ見てな」

そう言ってぽふん、と私の頭を撫でたイゾウさんが指差したのは、雲一つ無い青空で。
何故空を?という疑問は、そこから降りて来た一際鮮やかな青に目を奪われて掻き消えた。

「綺麗…大きな…鳥?」

ククッと笑うイゾウさんの次の発言に、私は今までで一番驚かされたと思う。

「お疲れさん、マルコ」
「…は?」

マルコさん!?
あの綺麗な鳥が!?

その姿をぽかんと見ていた私を宙空から一瞥した鳥…イゾウさん曰くマルコさん…は、静かにモビーの甲板に降り立った。

「マルコお疲れー!」
「…よい」


あ、鳥が喋った。
…本当に、マルコさんみたいだ…


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