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  14.デイズ




「お前ら、朝から何やってんだよい…」

怠そうな眠そうな顔でモビーに帰って来たマルコさんが、私とエースを見て固まった。

「見た通りストレッチですよ?」
「マルコ、リリィすげぇんだぜ」



* * *

あの後、抱えられた腕が緩んだ隙にそっと抜け出し、シャワーを浴びてから買って貰ったばかりの新しい服に袖を通した。
自分で選んだ服はやっぱりしっくり来る。

エリンに押し負けて色んな服を買ってしまったけど、以前イゾウさんに言われた様にモビーは男性ばかりだし昨日みたいな事がまた無いとも限らないから、ショートパンツにパーカーと動きやすい服を選んだ。
日避けに必ず履くようにとエリンにきつく言われたレギンスも忘れずに。

下ろしたばかりのサンダルは、トントンと軽く跳ねて足に馴染ませる。

うん、悪くない。


着替えたら無性に身体が動かしたくなって来たので、簡単にメイクを済ませて甲板に出た。



まだ少し夜の気怠さが残る甲板に不釣合いな、眩しいオレンジを見つけてその顔を覗き込む。

「おはよう、早起きだねエース」
「おう、おはようリリィ。2番隊は昼間船番だからな。それに、腹減って目が覚めた」

ニシシと笑うエースの顔にはよく見ればご飯粒がついてて、既に朝食は済ませたらしい。

「リリィは飯食わねえのか?」
「少し運動してからにする」

満腹で眠た気なエースの横で、適当にストレッチを始めた。
動かし出すと不思議な事に自然に身体が動いて、暫く使われていなかった筋肉が目を覚まし出す。

晴れた早朝、船の甲板でストレッチなんて、今までの旅の記憶にも無い新しい経験だ。
航海中ならどれだけ気持ちいいんだろうと、明日からの生活に思いを馳せる。

「すげぇな、リリィ」
「へ?」
「タコみてぇに柔らけぇ。それに、ちゃんと筋肉付いてんのな」

昨日サッチにも言われたな、それ。
言われてみれば確かにそれなりに筋肉は付いているけど、見事に割れた腹筋を持つエースに言われる程の物では無い。
それにしても…エースが言うと随分爽やかに聞こえるから不思議。

「んー…」
「どうした?」
「エース、ちょっと付き合って?」




―そして現在、エースを負荷代わりにストレッチをする私は、背中合わせでエースを乗せてぺたりと甲板に身体を着けている状態だ。

「朝から元気だねい」
「…若いですから」
「マルコはおっさんだからな」
「煩えよい!」

ガツンとマルコさんが繰り出した拳骨の衝撃が、エースを通して私まで届く。

これはちょっと…一瞬星が見えたし…

「いってぇ。覇気込めんな、覇気!」
「いだだ…おでこ打った…」
「あ、悪ぃリリィ。大丈夫かよい?」
「多分大丈夫です…今のところ」
「ったく、マルコは乱暴だよな」
「煩えよい。それより気をつけろよ、エース」
「分かってるって」

気をつけろって何にだろう?
むしろマルコさんこそ気をつけて欲しい…まだ頭が少しクラクラする。


若干含みを持たせた二人の会話の意味を私が知るのは、少し後の事になる。


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