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I wish and I believe

2P有り。※名無しのオリキャラ居ます。

月に一度、ルリは備品の確認の為にパドルシップへ行く。
以前は向うから報告を上げさせていたが、不備だなんだで手間が嵩むので直接行く事になったのだ。
弾薬に食料に薬品…パドルシップとはいえ、世界最大を誇る白ひげ海賊団の船。備蓄の量も膨大で、チェックには一日掛かる事も珍しくない。


「じゃ、行ってきますね」
「悪いねい、帰りは迎えに行くからよい」
「あ、ルリ待った待った!これ持ってけ」

サッチに渡されたのは、わたしの大好きなスコーンとクロテッドクリームの小瓶。

「お前あっち行ったら飯も食わねーで仕事するって聞いたからよ」
「ありがとう、サッチ」
「ルリばっかずりぃ!俺にも寄越せよ!」
「お前のはねーよ、さっき散々食ったろ」

サッチの気遣いに感謝しながら迎えに来た船に乗り込もうとした時、視線を感じて振り返るといつの間に来ていたのか船縁に寄り掛かるイゾウさんと目が合った。
心の中で挨拶して微笑むと、手にした煙管をひょいと上げて返してくれた。
行ってきます、イゾウさん。



1ヶ月ぶりに会うみんなは変わらず元気で。
モビーの前はパドルシップに乗っていたわたしにとってこの仕事は、楽しみな仕事の一つだ。
船を任されている航海士長に挨拶をして早速作業に取り掛かる。弾薬庫のチェックを終えて食料庫へ向かう途中、懐かしい顔と行き会った。

「相変わらず忙しそうだなぁ」
「久し振り!元気にしてた?」
「まぁな、ルリが居なくて張り合い無いけどな」

同じ頃に親父の家族になった彼と会うのも随分と久し振りだった。
コーヒーを持ってきてくれたので、スコーンをあけて休憩することにした。

「オヤツ持参かよ、遠足じゃないっての」
「サッチ隊長が持たせてくれたの」
「お前1番隊だろ?随分と可愛がられてんなぁ」
「おかげさまで退屈はしてないかな、書類仕事ばっかりだけどね」
「本船強い奴ばかりで出る幕無いんじゃねぇの?こっち戻って来いよ」
「やだよ。せっかく親父の近くに居られる様になったのに」

モビーへの移動が決まった時は、本当に嬉しかった。わたしを引き抜いてくれたのがイゾウさんだったと知ったのは暫く経ってからだったけど。

そろそろ仕事に戻ろうかというその時、大きな衝撃で船が揺れた。それと同時に鳴り響く鐘。敵襲だ。

「ルリツイてるなぁ、存分に暴れてこようぜ」

久々の戦闘なんだろう、甲板に走る途中すれ違う皆の顔は喜々として楽しそうだ。わたしも愛銃のシリンダーを回し予備の弾数を確認して、腰の愛刀を差し直す。

「随分多いね…弾足りるかなあ」
「いざとなったら抜けばいいだけだろ?んじゃ久々にどっちが多く獲るか競争な」
「手加減しないよ?」

こんな軽口を叩きながら戦闘に臨むのも久し振りだ。それにしても敵の数が随分と多い。モビーに連絡は行ってるだろうし心配することは何も無いけれど、気を引き締め直して甲板へ出た。


後方での支援に徹するつもりが、船への進入を許してしまったので出来れば使いたくない刀を久々に抜いた。
強さはたいした事無いのにやたら数ばっか多くて激しい戦闘だったけど、どうやら味方に犠牲者は出てないみたいでほっとする。
今の戦闘で弾薬使っちゃったし、敵船から回収する分も有るから在庫をまた確認しなおさなきゃ。せっかくチェックしたのにタイミング悪いな。
そんな事を考えていて、ふと気付く。いつもなら戦闘が終わればすっ飛んでくる筈の彼の姿が見えない事に。

名前を呼ばれてそちらへ目をやると、何かを取り囲むクルーの姿が見えた。
ゾクリ、と厭な感覚が背中を走って慌てて駆け寄ると、そこには腹部を血で濡らし青白い顔で苦しそうに息を吐く彼の姿が―

「あールリ…」
「今船医が来るから、ちょっと黙って…」
「…俺、アイツ嫌い、なんだけどなぁ…患者に容赦しねーし…」
「それだけ言う元気があるなら大丈夫だね」

そう言って笑い返したけど、流れ出す血は止まらないし呼吸が浅くなって居るのは素人目にだって解る。
どうしよう、多分このままだと拙い。彼を助けなきゃ。やるなら船医が来る前の今しかない。親父の大事な息子を、あんな奴らに取られてたまるもんか。
乱れた衣服を直す振りをして、大きく口を開けた傷口にそっと触れる。まだ温かいそれがぬるりとわたしの手や足を汚すけど、気にしてなんていられない。

彼の呼吸が僅かだが落ち着いたのを確認してそっと手を離した時、駆けて来る船医の向う、青い空から一際鮮やかな碧が此方へ降りて来るのが見えた。マルコ隊長だ。

血塗れのわたしを見て一瞬顔を引き攣らせたマルコ隊長は、それが返り血と彼の血だと気付いてほっと息を吐いた。
後処理を手伝おうとしたら「休んどけよい」と言われたので甲板の隅に腰を下ろす。


――久し振りに能力を人に使った。


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