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Atheist


*エース視点。

不寝番明け。眠い目を擦りながら自室へと向かっていると、廊下の先から話し声が聞こえた。
誰だ?こんな朝早くから。

静かに扉を閉める音が聞こえて、こちらへ向かってくる人影。

「おはよう、エース。不寝番お疲れ様」
「あールリおはよう。早ぇな…」
「ちょっと目が覚めちゃって。ゆっくり休んでね、おやすみ」

そう言って自室の方へ歩いていくルリ。朝早いってのに化粧も着替えも完璧で、何処で何やってたんだ?
マルコの部屋は後ろだし、この先の部屋は…イゾウか?ジョズやビスタも有り得なくはねぇけど、多分イゾウだよな。
ただでさえ眠い頭でごちゃごちゃ考えてたらすぐに寝ちまったけどまぁいっか、別に。元々考え事は性に合わねぇし。




「なぁ、イゾウとルリって何なの?」
「何なのってお前の兄弟だろ?」
「いや、そういう意味じゃなくってさ」

何となく気になってたみたいで、夕飯を食いながら向かいに座るサッチに聞いていた。
サッチの奴、ホントは判ってる癖に。

「付き合ってる訳じゃねぇんだよな?」
「あー違う違う、すげー仲良いけどそういうんじゃねーよアレは」

サッチの答えは「今はまだな」なんて含みを持たせた言い方で。

「たまに手繋いで歩いてるよな?」
「たまにな」

「よく二人で島に降りてるよな?」
「降りてるな」

「イゾウはルリが好きだよな?」
「多分な」

「ルリもイゾウが好きだよな?」
「多分な」

「今朝イゾウの部屋から出て来るの見たぜ?」
「あーたまに見かけるな」

「それってつまり、ソーイウコトじゃねぇの?」
「…あいつらは、無駄に大人なんだよな」

「お前にはまだ判んねーだろうけど」なんて失礼な、俺だって立派な大人だ。

「ルリはさ、傘下で副船長だったろ?モビーに引っ張ったのがイゾウで。だからなんつーか、変にケジメつーか建前っつーか…一周回って変なトコに落ち着いてるって感じ?ま、それだけじゃねぇみたいだけどよ」
「一周回ったら元通りじゃねぇの?」
「モノの例えだよ、例え」
「…そういうんが大人なら、俺は大人になりたくねぇ」
「大丈夫だよ、頑張ってもエースには無理だから」

隣で黙って聞いていたハルタに笑顔で突っ込まれた。サッチといいハルタといい、俺を何だと思ってんだ。

「ここは海賊船で僕らは海賊だよ?誰かに持ってかれるとか考えない辺り、ほんっと笑っちゃう位能天気だよねー」
「あんな丸判りの二人にちょっかい出す命知らずいねーだろ?」
「面白いからサッチがルリに手出してみてよ」
「自分でやれって」
「やだよ。ルリは嫌いじゃないけどイゾウに撃たれたくないし」
「あ、噂をすればだ」

マルコとイゾウと一緒にルリが入って来たので、そのまま何となくこの話は終わった。
俺たちの横に座って飯を食うルリが気になってついつい見てしまう。難しい事は俺には良く判んねぇけど、イゾウと話すルリは幸せそうな表情をしていて、本人が良いなら形なんてどうでもいいのかと思った。

「じゃ、行ってきますね。イゾウさん」

そう言ってルリはマルコと食堂を出て行った。こんな時間なのにまだ仕事か。ってか「行ってきます」って何かいいな。

「余計なこと考えてんじゃねェよ?エース」
「は?」
「あはは、流石イゾウ。お見通しじゃん」
「やっぱエースはまだまだ大人になれねーな」
「うるせぇ、サッチ」

そう言うイゾウも普段は余り見た事の無い表情をしていたから。
大事な兄弟を見守ろうと心に決めた。俺なりに。

fin.

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