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Butterfly soars


敵船から回収したお宝をエースと二人で整理していたら、海楼石の錠が出てきた。

「うわ、俺ムリ。ルリ任せた」
「…わたしも無理だよ?」
「え?ルリって能力者だったのか!?」
「あ、うん。そっかエースは知らなかったんだっけ?」
「知らねぇって。なになに?何の能力?」

久しく人前で能力を使っていないから、エースが知らないのは当然だった。
それにわたしが能力者だと知っているのは、隊長達を除くと船医などほんの数人しか居ない。
つまり、隠してるって事だ。

「……内緒」
「はぁ!?何だよケチんなよ。減るモンじゃねーだろ」
「減るの。だから内緒」

冗談ではなく、わたしの能力は時に対価を必要とする。
だからなるべく使わないようにと親父にも言われているのだ。

ともかく海楼石を放っとく訳には行かないので、他の隊長を呼びに行く。
能力を教えろと迫るエースを止めてくれる人にしなきゃ。


「イゾウさん、今大丈夫ですか?」
「ん?どうした?」
「エースとお宝整理してたら海楼石が…」
「あァ、待ってな。すぐ行く」

書類仕事を切り上げてくれたイゾウさんは、歩きながらわたしの髪を一束掬ってくるくると遊ぶ。器用な人だ。
手を繋いでる訳じゃないのに繋がってる感覚に、鼓動が早まる。よかった、触れられてるのが髪で。体温が上がった事がばれない。

「ごめんなさい、イゾウさんも忙しいのに」
「いや?ルリが頼ってくれんだ。嫌な訳ないだろ?」

普段は銃を使うけど帯刀もしているわたしは、決まって人の左側を歩く。
イゾウさんがいつも髪に触れてくれるのが嬉しくて、左サイドだけを髪留めで留めて、右は下ろしたままにするのがいつの間にか習慣になっていた。

「後でこっちも手伝ってくれりゃ、何の問題もねェ」
「勿論、喜んで」

次の時間の約束をくれたイゾウさんに笑顔で応え倉庫の扉を開けると、愛用のテンガロンハットを顔に載せて眠るエース。これだからわたしが一緒に片付ける羽目になったんだ。

「…イゾウさん、エースに海楼石嵌めちゃっていいですよ?」
「面白ェな、ついでに一発撃ち込んでやろうか」

そう言ってイゾウさんが懐に手をやった瞬間、ガバッと音がしそうな勢いでエースは飛び起きる。残念、あと少しだったのに。

「あっぶねー。イゾウとかマジでやりそうで怖ぇし!」
「サボってるエースが悪いの!」

起きたって結局働かないエースはイゾウさんに任せて、早く終わらせよう。

「なぁなぁ、イゾウもルリが能力者って知ってたのか?」
「当然だろ?じゃなきゃ海に落ちたら誰が助けんだ」
「なんだよー知らなかったの俺だけかよー」
「エース、絶対に外でルリが能力者って言うんじゃねェよ?」
「黙ってるから能力くらい教えろよ!」
「…判った判った、ごめんねエース。今度ゆっくり教えるからとにかく今は片付けよ?」

お宝より能力より、この後待ってるイゾウさんとの時間のほうがよっぽど大事だ。

「はっ、まさか…人に言えない様な恥かしい能力!?」
「…イゾウさん、マジでやっちゃって下さい…」


fin.

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