マルコ隊長とご飯

ご飯series

「マルコ隊長、食事持ってきましたよー」
「ん、ああ。そこ置いとい……」
「ダメです」
「……は?」
「ダメです。今すぐ食べて下さい」

 昨日だってそう言って結局夕方まで食べなかったんだ。だから今日わたしも一緒に食べるべく、トレイの上には二人分の昼食。

「いただきまーす」

 今日のランチは生ハムとレタスのサンドイッチに具沢山のポトフ。
 バゲットの切れ目にたっぷりと挟まれた生ハムは、昨日挑んで来た海賊船からの戦利品。やたらと食料庫が充実していたその船のおかげで、サッチは昨日からご機嫌だ。

 生ハム、美味しい。レタスもシャキシャキだし、ドレッシングの酸味と生ハムの相性がとても良い……これはワインが欲しくなる味。
 渋々と食べ始めたマルコ隊長も、一口囓ると満更でもない顔をした。うん、美味しい物は美味しいうちに。出来立てに限るのです。それにしても……

「マルコ隊長って……意外と所作綺麗ですよね。もしかして実は良家のご子息でした、みたいな事は……」
「ねえよい。あと意外ってのはなんだ」
「え、ほこ気にひます?」

 がぶり。と豪快に噛り付きながら喋ったら、喋るか食べるかどっちかにしろと至極まっとうなお叱りを受ける。
 ごくんと飲み込んで、スープも一口。機嫌がいい時のサッチのご飯は、いつにも増して美味しい。
 
「あ……」
「なんだよい」
「もしかして……オリーブ苦手なんですか?」

 「あ、やべ」って顔をしたマルコ隊長のお皿の隅には、綺麗に避けられたオリーブの小山。
 
「……食えなくはねえよい」
「ですよねえ。嫌いなもの、サッチが入れるはずないですもん」

 あれでサッチはマメなので、行き先の分かっているお皿には、苦手なものをのせない。まあ本音は、残されるのが嫌なんだろうと思ってる。
 という事はつまり……

「いつも無理して食べてたんですか?」
「……無理、じゃねえ。人前で除けるのが面倒くせえだけだよい」
「それって……なんでもないです!」

 見栄張ってる……と言う筈が一睨みされ、中途半端に開いた口にはサンドイッチを詰め込んだ。
 隊長、しかも1番隊の隊長として、わたしには分からない苦労も沢山有るのだろう、と思う。
 なにしろここは海賊船なのだ。一癖も二癖もある海の男たちを纏めるのは、ちょっとやそっとの気概できる事ではない。
 
「それ、わたし食べますよ。証拠隠滅です」
「……」

 だからワインが飲みたい。と言おうと思ったけれど、流石に交換条件を出すのは大人気ないので我慢した。

「ごちそうさまでした」

 早くも仕事に戻ったマルコ隊長の、空になったお皿と引き換えにポットで持ってきたコーヒーを置いて。
 
 わたしもあと少し、がんばろう。
 
(2015118



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