過去拍手文 | ナノ

私の知らないわたし

▼Home

ニュースクーが落とした新聞の間から、ハラリと抜け落ちた一枚の紙。

「なに…?コレ」
「お、今年もやんのか。どれどれ?」

ニマニマしながらサッチが拾い上げたそのチラシには『美し過ぎる女海賊ランキング!投票受付中!』の文字。

「今年もって…毎年やってるの!?」
「もう五回目だぜ?知らなかったのか?」
「知らない…」

軽く飽きれつつも気になってチラっと覗き見ると、自薦だか他薦だかエントリーされた沢山の女海賊の中には見知った顔もちらほら見える。

「女帝は既に殿堂入りな。エースの弟の船のクルーが、毎回惜しい所まで行くんだけどなぁ…誰か新しいかわい子ちゃん居ねーかな」

楽しそうにリストを眺めるサッチの目線が「おっ、お…」と言いながら一点で止まった。

「どうしたの?誰か可愛い子居た?」
「おう、とびっきりのな。イゾウ、ラクヨウ。これ見てみろよ」

離れた場所で武器の手入れをしていた二人を、サッチが手招きする。

「え?ちょ、イゾウさんも!?」
「マルコもビスタも、全員投票してると思うぜ?ベイが出てるからな」
「あ、それならちょっと安心した…」
「でも今年はベイじゃねぇかも知んねーな」
「そんなに可愛いの…?」
「まぁ…俺も嫌いな顔じゃねーけど、どっちかってとイゾウのど真ん中だなコレは」
「…サッチ……」

きゅっと両の手を握りしめて睨むルリの視線を、サッチはヘラヘラと軽く受け流す。

「どれどれ?」
「ほら、この子。な、イイだろ?」
「…あァ、確かに…悪くねェな」

イゾウのまさかの発言に、その声が笑いを堪えたモノだという事に気付く余裕も無くルリは本気で泣きそうになる。

「モビーからも一人くらい出ねぇとなぁ」
「ほら、いいから見てみろって」
「やだ、見たくな……ってモビー?え…?えぇっ!?わたし!?」

慌ててチラシを奪い取りその一覧を見ると、確かに自分の写真が有る。しかもいつの間に隠し撮りをされたのか、全く身に覚えの無い写真だ。

「うぁ…手配書作られないように、写真だけは避けて来たのに…」
「は?そっちかよ」
「でもこの写真の手配書なら悪くねェよな」
「街角から剥がされないように、俺が海兵でも絶対捕まえねぇな」
「ラクヨウが海兵とか、似合わねぇっての」

好き勝手言い出す三人を見て小さくため息を吐きながら再び写真を見て、ふと気付く。

(これ、イゾウさんと居る時の写真だ…)

周りは切り抜いたのだろう、画面の隅に少し写るのはイゾウの着物の色で、そちらを見上げて微笑む自分がそこに居た。

(イゾウさんと居る時、わたしこんな顔してるんだ…)

ゆっくり熱を帯びる頬を隠すようにくるくると髪を弄っていると、その様子を見ていたイゾウがポツリと呟いた。

「あんまり人に見せてェ顔じゃねェな」
「…イゾウさん?」

(それは…どういう…?)

チクリと痛む心臓に、その言葉の真意を図ろうとするも、イゾウに問う前に能天気なラクヨウの発言に遮られてしまった。

「そうか?すげーイイよなぁ?」
「ありがとう…でも、褒めても何も出ないよ?」
「だからじゃねェか。お前には分からねェだろうけどな」

イマイチ理解していないラクヨウを蚊帳の外に、何かを感じ取ったサッチはタバコに火を点けながらニヤリとほくそ笑む。

「これ、取り下げ出来ないのかなぁ…」
「今更取り下げた所で、もうあちこちに出回ってんだろ?」
「本当はこっちです〜って、別人の写真でも送るか?」
「…女装したサッチとかか?」
「え…それは何かちょっとヤダ…モビー的にもどうかと…」
「とりあえず俺、オヤジに見せてくっかな」

バシッとチラシを持って立ち上がり、ラクヨウが謎の鼻歌混じりに食堂を出て行く。

「親父にまで…何だか大変な事になっちゃったなぁ…」
「ま、回収すんなら頑張れよイゾウ」
「楽しんでんじゃねェよ」

イゾウの睨みをヒヒっと笑いで跳ね返し、タバコを揉み消したサッチは厨房の奥へと逃げて行った。

「…まァ、あれくらいはサービスしてやるか」
「え、なんですかそれ?」
「あんな写真よりいい顔を俺は知ってるからな」
「……はい?」
「その顔とか、な?」

ニヤリと意地悪く笑うイゾウはその発言とは裏腹に、先ずは傘下から回収しようと頭の中で今日の仕事の段取りをつけ始めた。

拍手お礼文 〜2014.02.12

prev / index / next
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -