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ねがい

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例えばわたしを拾ってくれたのが
白ひげ傘下の船じゃなかったら

あの日イゾウさんが
パドルに来ていなかったら

その時敵襲が無かったとしたら



きっと今でもわたしはパドルに居て、イゾウさんは憧れの隊長さんの一人でしか無く、話をする事も殆ど無くて。

「どうした、ルリ?」
「いえ。なんでもないですよ?」

こうして二人きりで話をしている今この瞬間は、いろんな偶然が重なって作られ与えられた、幸運なんだって思う事がある。

全ての物事は必然だって誰かが言ってたし、与えられた選択肢を選んだのは自分だから、運命だなんて思わないけれど。

それでも、親父の為にイゾウさんと同じ方向へ歩いて行ける毎日に。


その合間の、ささやかな幸せに。



「何でも無いって割に、ずっとにやけてるぞ?」
「えぇっ…うそ!?」
「話してみな?」
「…あの、ですね…笑わないで下さいね?」
「聞かなきゃ分からねェよ」
「…むー。えと、お箸とか湯呑とか色々…お揃いになってしまって、暫く経ちますよね?」
「あァ、そうだな」
「次は何か有るかなーって…その…わー!やっぱり聞かなかった事にして下さいっ」

わたしは日に日に欲張りになる。

だって、既にあんなに有るのにもっと何か欲しいって言ってしまったんだから。

膝を抱えて俯くわたしの頭の上から、抑えた笑い声が降って来る。

「やっぱり笑われた…」
「ルリのせっかくのおねだりだからな、覚えとくよ」
「おねだりって…そんなんじゃないですってば…もう…」


本当は、イゾウさんが居れば何も要らないのに。


さすがにそれは口に出来ず、未だ笑いを噛み殺すイゾウさんの方をチラリと見れば、急に真剣に変わった目線に吸い寄せられる様に顔を上げた。

「…形じゃねェけどな。それでも、目に見えるモンも悪くないだろ?」


返事をしたいのに言葉が出てこないわたしは、ゆっくりと大きく頷いた。


拍手お礼文〜2014.01.13
*二人が出会った時のお話は「In the blink of an eye」です。


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