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Gift for…

▼「Gift」裏話になります。

運よく船番にも当たらず、マルコ隊長の仕事も順調に片付いていたので、久し振りにイゾウさんと二人で島に降りていた。
特に目的は無いけれど、気の向くままふらりと歩く。
いつも通りのそんな時間が、わたしはすごく気に入っている。

小さいけれどよく栄えた島の裏通りに、そのお店はひっそりと在った。

「ワノ国の雑貨屋さん…」
「へぇ、こんな小さい島に珍しいな。覗くか?」
「もちろんです」

店内には所狭しと、でも丁寧に沢山の商品が並ぶ。
千代紙とかお手玉とか懐かしいなぁ。簪や櫛も沢山揃ってて目移りしたけど、今は特に必要無いしとその先に目をやると、小さな蒔絵が施された漆塗りの綺麗な箸で目が止まった。
モビーの食堂にも備え付けの箸は有るけど、わたし達にとっては日用品だ。ちょっと位拘りたい。
それに丁寧に塗られた漆黒の箸は、イゾウさんの綺麗な指にきっとよく映える。

包んで貰おうと店主さんの方へ振り返ると、既に店主さんと何かを話すイゾウさんがいた。
カウンターの上には白い焼き物の湯飲みが、大きさ違いでふたつ。

「あ、モビーの色だ…」
「ルリならそう言うと思った」

確か南の方の焼き物だ。磁器とは違う穏やかな白が暖かい。

店主さんに漆塗りの箸が欲しい旨を伝えると「お若くてもやっぱりワノ国の人ですねぇ」と目を細め「この箸は揃いなんですよ」と少し小ぶりな朱塗りの箸を出して来た。

「あァ…綺麗だな。それも一緒に包んでくれ」
「ちょ、イゾウさん、これはわたしが買います!」
「…じゃあ朱塗りの方を俺が買う」

こういう場面でのイゾウさんに押し勝てた例が無い。
珍しく片方で妥協してくれたイゾウさんに素直に甘えて、会計を済ませる。
笑顔の店主さんに見送られ、店を後にした。

「よく考えたら、お揃いになっちゃう…」

今更ながら気づいて呟くと「構わねェだろ」と言われたけれど、でもだってこれって所謂"夫婦箸"ってやつだよね?軽く動揺するわたしの荷物を取り、空いた手に指をそっと絡めてきたイゾウさんはとても機嫌がいい。

「それに、湯飲みもひとつはルリ、お前さんのだよ」
「!?」
「そんな顔しなくても、揃いだって気づく様な繊細な奴はモビーにいねェよ」

そう言って笑うイゾウさんを見上げるわたしの顔は、きっと真っ赤だ。
見られたく無くて半歩後ろを歩こうと下がったら、握った手を強く引かれ隣に戻された。

モビーに戻ったら新しい湯飲みにお茶を淹れて、今度イゾウさんの為に食事を作ろう。

拍手お礼文〜2013.07.19まで。

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