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いっぱい、ありがとう

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誕生日限定で設置したコメントBOXに皆様から頂いたお祝いの品々を、イゾウさんに届けました!


「イゾウさん、これ何処に運びましょう?」

イゾウさんのお誕生日の数日後。
木箱いっぱいに詰め込まれたお酒にお手紙、その他沢山の品をイゾウさんの元へ運んだ。
…ズルズルと引きずって。

「…戦利品か?」
「違いますよー。傘下や庇護してる島のお姉さん達から届いた、お誕生日の贈り物です」

沢山の贈り物は嬉しくも誇らしくも有るけれど、その大半が女性からと云うのは何とも複雑な気持ちだった。

「へェ…」
「続々と届くので、有る程度纏まってから渡そうってマルコ隊長の部屋で預かってたんです」

ガサガサと軽く中身を検めたイゾウさんは、軽々と木箱を持ち上げ歩き出した。

「マルコの奴…いい性格してやがる」
「え?」
「いや、何でもねェ」

イゾウさんの声が聞こえず思わず駆け寄り、流れでそのままイゾウさんの部屋へと一緒に向かう。



どさっと箱を下ろしたイゾウさんが、箱から一つ一つ取り出し渡して来るので、机の上に並べて行く。

「お酒が多いですねえ。イゾウさんて、やっぱりそう云うイメージなんだ…」

森伊蔵に魔王に十四代龍泉の純米大吟醸、久保田の萬寿に獺祭の磨き二割三分まである。
ちょっと…いや、かなり羨ましいな。
それにヘマタイトとアメジストの羽織紐や紬の浴衣にべっ甲の簪…これは…メンズエステチケット?

エースの時はお肉だらけだった。サッチの時は各地の珍しい食材が多く届いてたけど、それらとは比じゃないくらい、とにかく上質な品々のオンパレードだ。

最後に一纏めにされた手紙の束を解き、一通一通軽く目を通しているイゾウさんの横顔を見ているうちに、何とも言えない煩悶とした気持ちにぐるぐる巻にされる。

だって…気になる。
すっごく気になる。
気になるけど、流石に手紙は見る訳には行かないし…

どうしよう、告白とかされてたり
会いませんか?とか書かれてたり
電伝虫の番号が書いてあったら…

「なんだこれは…“親父と一日一緒券 ”?」

そんなわたしの心の内なんて気付いて無いイゾウさんは(よくよく考えれば、イゾウさんが気付かない筈は無いのだけれど、とにかくわたしにそんな余裕が無かったのだ)訝しげな表情で一枚の紙をわたしに差し出して来た。

「うわ、懐かしい…」
「懐かしいのか?」
「作りませんでした?子供の頃に両親へのプレゼントにこんな感じの」
「いや、記憶にねェな」
「でもこれ、親父の都合は無視なのかな……えぇっ…!?」

何気なくぺらりと裏へ返して驚いた。
だってそこには……

「うそ、親父のサイン……入ってる」

まさかの根回しに思わず吹き出した。だってこんな…

「あァ…成る程な…」
「どうしたんです?」
「差出人だよ。見てみな」
「…あぁ、成る程…」

手渡された封筒には、ベイさんの船のジョリーロジャーが蜜蝋で押されていた。
流石の遊び心と、それに乗る親父の寛容さが粋でわたしまで嬉しくなる。
そしてこれら一つ一つが、イゾウさんが皆に愛されている事を暗に教えてくれる。

「これは、使わない訳には行かねェよなァ…」

どうしようかと悩むその姿が可愛くて、親父の膝の上でのんびり過ごすイゾウさんの姿を想像して、その破壊力に本人を前に身悶えしてしまう。

「どうした?」
「いえ、なんでも…」

含み笑いで問われ、返す言葉も向ける顔もなくて。これはそろそろ何か理由を付けて部屋を辞そうと思考を巡らし始める。

「まァそのうち、だな。とりあえず今は…」

イゾウさんは贈り物の中から迷わず一本の酒瓶を掴むと、部屋の隅、酒器が並べて有る小さな棚の横に腰掛ける。
イゾウさんが一人で飲む時の指定席だ。

「ルリも飲むだろ?」
「え?わたしまで頂いちゃって良いんですか?」

思わず顔を上げたわたしに頷いたイゾウさんは、手際よく栓を抜き二つの切子の猪口を出すと(これ、いつか一緒に下船した時に買ったやつだ…)普段は畳んでいる椅子を一つ広げ、躊躇うわたしに座る様促す。

「どんな良い酒でも、一人で飲んだら美味くねェからな」

言いながらなみなみと二つの猪口を満たすので、素直に腰掛け猪口を手に取る。

「じゃあ…改めておめでとうございます、ですかね?」
「ルリで始まった誕生日の締めもルリか。悪くねェな」

満足そうな顔でイゾウさんの言ったその言葉は何だかとても恥ずかしくて、やっぱり早めに辞しておけば良かったと思った。
でもお酒はとても美味しくてわたしの好みで、これが飲めるなら多少の事は…うん……なんて現金な事を考えていたら。

「この中じゃコレが一番好きだろうと思ってな」

とか言われるからもう。

敵わない。
イゾウさんには本当に、わたしが束になっても敵わないんだと改めて思い知らされる。


束といえば手紙の束は、全て読んだ後にベイさんの以外は一通残らず纏め直し、たまたま部屋を訪ねて来た隊員さんの手で文書室に運ばれて行った。

悪いと思いつつほっとしてしまったわたしに「気にする事はねェよ」と言ったイゾウさんは、やっぱりわたしの考えてる事なんて全部お見通しだったみたいだ。

fin.
改めて…おめでとうイゾウさん!!
〜2014.12.15


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