過去拍手文 | ナノ


おまけ

照れ隠しに解いた包み紙を畳んでいて、そこに押された見憶えの有る雅印に気付く。

先月わたしがイゾウさんへのプレゼントに使ったのと、同じお店の物だった。

「イゾウさんも、ここに…?」
「なんだ、気付いたのか」

と云う事はこれも何かの植物で染めた和紙で…でもまさか、わたしが込めた意味に気付いたなんて事は…


あの日を思い返していて、自分がとんでもなくぼんやりしていた事に今頃になって気付いた。

「あの…イゾウさん…」
「どうした?」
「ごめんなさい。わたし、すっかり忘れてました…」

忘れていた訳ではないのだけれど、今日がその日だと云う事がすっかり頭から抜け落ちていたのだ。

「イゾウさんにもお返し、しなくちゃなのに…」
「それならもう貰っただろ?」
「え?」

そう言ったイゾウさんは徐にわたしの手を取ると、わたしの指で微かに自分の口唇に触れた。

「…え…それって…」


その意味に気付いたわたしは、へなへなととろけるようにその場に崩れ落ちた。



―それが桔梗で染められた和紙だったと知るのは、もう少し先の事。

fin.
過去拍手文 〜2014.5.1


prev / index / next
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -