足が…足がスースーする。こんな服普段着ないから気持ちが悪い…。なんか、凄い違和感があるわ。信じられないかもしれないが今私…ドレスというものを着ているのだ。あれだよあの…結婚式とかに着るようなドレスだよ。この私に…こんなもの着る時が来るとはとはとは…。はぁ、と溜め息を吐けば隣に立つノボリさんがこちらに視線を向ける。

「ナマエ様…、先程から溜め息ばかりでございますね」

溜め息も出るわ。何故に私がお偉いさんが沢山いるパーティーに出なければいけないのだ。それもこれもクラウドのせいだ!!あんな映像ほいほいテレビ局に渡しやがって!その映像を見たこのライモンシティのジムリーダーであるカミツレさんに「貴女の戦いにクラクラしちゃったわ!是非お話がしたいの!」なんて言われたら…断れねぇよ。で、私のことを皆に紹介したいとかなんとかで…今に至る。なははは。オマケにドレスまで頂いちゃったんだよ…。しかも私のサイズにピッタリの。どこで漏れたし、私のスリーサイズ。

で、無事カミツレさんともお話が出来て私の目的は終わったわけだ。…今はこのパーティーが早く終わることを願うばかりですよ全く。お洒落なグラスに入った、これまたお洒落なピンク色のお酒に口をつける。…美味しいけど、早く帰りたい。

「…やはり、わたくしではなく…クダリと一緒の方が宜しかったのでしょう…?」

「うぇい?」

ちょ、ちょ、ちょ。変な声出たやないかい。ノボリさんを見れば…まぁなんとも悲しそうな表情を浮かべているではありませんか。黒いスーツのイケメンなお兄さんがそんな顔したら勿体ないぜ。あー……このパーティーに参加出来るのがな、二人だけだったんだ。で、ノボリさんとクダリさんがジャンケンした結果ノボリさんが勝利したのだ。勝利直後の彼の「スーパーブラボー!!」という雄叫びを私は忘れることはないだろう。

「ノボリさんが嫌ってわけではなくて…嫌なのはこの格好だよ…」

両手でひらひらとした煌びやかなスカートを持ってみせる。が、ノボリさんは首を傾げるだけで意味が分からないといった様子。えー…違和感を感じてるのはもしかして私だけ?…いやいや、この格好見たクラウドは爆笑してたからそんなことはないはず。流石にイラッとしたけど、クダリさんの冷たい視線が飛んでたからざまぁみろって感じだぜ!なはは!……あと、めちゃくちゃ恥ずかしいのよ。普段ラフすぎる格好しかしない私が…ドレスって。思わず苦笑する私ですよ。

「…というか私にこんな格好は似合わないですし。うん、私にはやっぱりスウェットとかジャージとかスウェットとかジャージがお似合いですよ…ははは」

やばい。自分に似合う服がジャージとスウェットしか出てこない。女子失格である。…まずな、私みたいな庶民にパーティーっていうのも敷居が高すぎるし、カミツレさんデザインのこのドレスだって…。あれだよ、敷居がチェ・ホンマン三人分くらいの高さだよ。誰も越えられねぇわ。はぁ……ん?手に違和感…が!?

「ノ…ノボリ氏!?」

混乱のあまりオタクみたいな呼び方をしてしまったではないか。いやだってさ…あの、ノボリ氏がね…なんか知らねぇけど私の手をだね…握ってるの。私よりも大きな両手で、ギュッと大事そうに。優しさを宿した瞳、頬はほんのり赤く…いつものへの字口とは違い、唇には笑みを乗せている。何故乙女の表情をするのがノボリさんなのかが疑問だ。が、彼の言葉に…私までもが乙女のようになろうとは思いもしなかった。

「自分を卑下なさるのはお止めくださいまし。普段にまして、こんなにも美しいのですから」

聞き慣れた心地良い声で、とんでもない事を言い放つ。…う、美しい!?冗談だよね?とその顔を見るが、ノボリさんはなんともうっとりとした表情を浮かべている。…ほ、本気でそう思っている…だと!?

「な、なななな、なにを…うぐっ!」

急に後頭部を掴まれたかと思うとそのまま彼の胸に顔を押しつけられた。むぎゅってなったんですけど。あとな……どこ行った、私の女の子らしさ。年頃の女子はうぐっ!とか言わないからな。いやまぁそれは置いといて誰か…誰かノボリさんの暴走を止めてくれ。周りからひゅーひゅーって聞こえんだけど。恥ずかしいんですけど!!!脳内で小さな私が大暴れするのを止めるが如く、耳元でノボリさんが囁く。

「…そのような可愛いらしいお顔、わたくし以外に見せてはなりませんよ。ナマエさまに想いを寄せる男がこれ以上増えては困ってしまいますから…ね?」

ゾクッと背筋に冷たいものが走る。え、ノ、ノボ、ノボ…ノボリ氏?あなた、や、ヤンデレ…?ちょ、馬鹿!乙女時々ヤンデレで狼って…なにそれ怖い。ポカンと私はそのまま固まるしか出来なかったのであった。平和どこ行った。直ぐさま帰ってこい。


後書き

ミーネさまリクエストの「自分を卑下なさるのはお止めくださいまし。普段にまして、こんなにも美しいのですから」でした!ノボリさんの性的を表すような台詞にニヤニヤしました^^* しかし書くにつれてヤンデレに…あれ?←
ヤンデレ苦手でしたらごめんなさいです…orz

でもでも!本当に楽しく書かせて頂きました♪少しでもノボリさんの色気が…出てるといいなぁ…!!それではミーネさま!素敵な台詞、そして企画に参加して下さりありがとうございましたー!!


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