サブウェイマスターの二人を抱えて歩く私と金髪碧眼のイケメン双子はやはり目立つようだ。視線がこう…凄いね。以前のような殺気は感じない。いや違うな。私には向けられていないと言うのが正しいか。あの一件以来…エリ子たちから懐かれるし…おまけに最近…エリ子たちはノボリさんたちを敵視するようになったのだ。あんなにきゃーきゃー言ってたのにな!今は私がきゃーきゃー言われとるわ!って…馬鹿やろう。アブノーマルは受け付けませんから…!!なんか余計に面倒くさくなって私はげんなりである。

そんなことを考えている間に医務室に辿り着いたわけだ。三人をベッドに寝かせ、さてどうしたもんかと悩んでいる最中なのです。いやな、こうなった原因は私のせいだし…一人だけ「じゃ、失礼しゃーっす」って立ち去るのもいかんだろう。…まぁ私が居たところでどうにも出来ないんだがな!はっはっは!……はぁ〜、気まずい。気まずいのです。だんまりなお兄さんと無表情なランクルスと私…空気が重すぎるんだぜ!お二人さん…早く目覚めよ…。そんな私の思いが通じたのか、クダリさんの瞼がピクリと動く。

「……クダリさん、大丈夫?」

「んー……?カオル?」

上半身を起こしへらりと笑うクダリさん。あぁ…彼の笑顔だけでこの場の空気がすっごく軽くなった!うん…なんていうかさ…笑顔って大事だね、やっぱり。今年度のナイススマイルで賞を…クダリさん!あなたに差し上げます。授賞おめでとう!私の脳内で、眩しすぎるほどのスポットライトとカメラのフラッシュを浴びて笑顔を浮かべ手を振るクダリさんがいる。やだ、皆さんフラッシュし過ぎ!目が痛くなるわ!!…あら、いつの間にかノボリさんとエメットさんも起きてるやん。

「いたた…酷い目に合いました…」

「本当だね〜。ボク、あんなに無表情なランクルス初めて見たよ!」

思い出したのかクスクスと笑うエメットさんは気づいていない。ランクルスが鋭い視線を向けていることに。…あんた、夜道には気をつけてくれよ。うちのランクルスは、怖いんだからな!その時エメットさんが私に、ねぇ!、と声をかけてきた。…なんか、この人…むやみやたらと甘い空気を醸し出してる気がするんだが…。

「キミが、ボクを運んでくれたの?」

「いや、私じゃなくて…こっちのお兄さんが…」

「…なーんだ、インゴかぁ。残念…」

「残念じゃねぇよ。あ…インゴって…このお兄さんの名前?」

隠語じゃなかったんだな。あー良かった。隠語を助けたって意味わかんなかったもんな!ビビったからな!なるほどなるほど…クダリさんっぽいのがエメットさん、ノボリさんっぽいのがインゴさんな。ちなみにインゴさん、ずーっとランクルスを見てる。そ、そんなにランクルスが魅力的なのかしら…?……うーん、名前はわかったけどさ、彼らは一体……?

「…あの、今更ながら…お二人は…えぇと、何者?」

「ん?ボクたち?ボクたちは、サブウェイボス!」

「サブウェイ…ボス?」

ごめん。サブウェイマスターは攻略本に載ってたから知ってたけど、サブウェイボスってなんぞ?…攻略本に載ってたっけ?いや私が知ってるのはノボリさんとクダリさんだけや。…サブウェイボスって、一体なんなん…?そんな私の疑問を感じ取ったのかノボリさんが、サブウェイボスとは…、と口を開いた。

「イッシュとは違う地方にあるバトルサブウェイの主…。わたくしたちサブウェイマスターと同じ存在でございます」

「…はぁ、なるほど」

ふーん。バトルサブウェイって、違うとこにもあるんだな。つまり、役職は一緒だけど、呼び方が違うってことね。把握した。だからコートも似たようなものなのか。……あら?あらら?一層あんたらがここにいる意味がわからんのだけど。ボスがいなくてそっちのギアステ大丈夫なん!?

「なにをしにイッシュまで?」

「それ僕も知りたい!何も言わずに突然来るんだもん。久し振りに会えたから嬉しかったけどびっくりした!」

「そう言えばわたくしもどういった目的でいらっしゃったのか聞いておりませんでしたね」

「あれ?ボク言ってなかったけ?新しい特警の子に会いに来たんだ!」

……なん、だと?特警って…あの、あれだよな。私だよな?うん、まだ新しい人は特警に入ってない。未だに一人でSPやってますよ。……なんで私に?そう思ったのは私だけではなかったようで、心なしかノボリさんとクダリさんの顔が…怖い気がするんですけど。そんな二人の様子に気づいていないエメットさんはそのまま話を続ける。

「聞いた話によるとポケモンの技を受けても平然としてるんデショ!?きっとなにか特別な訓練をしてるんだよね!?ボクたち、それが知りたくてイッシュまできたんだ!ね、インゴ!」

「……?」

「…あぁ、インゴはイッシュの言葉分からないもんね」

小さく呟くと、エメットさんがペラペラペラペラ〜!!と英語を喋り出して私は目を見開く。…え、エメットさん…格好いいやん。日本語と英語両方話せるってまじ凄い。エメットさんまじリスペクトっす。

「……yes」

うっかり聞き逃してしまいそうなくらいインゴさん声ちっちゃ!!…って、それは置いといて…特警…私なんですよね。はい…。ど、どうする?今ここで挙手してみるか?……いや、ちょっと言えない。エメットさんがキラキラした目で「きっと筋肉ムキムキなナイスガイなんだろうなぁ!スーパーマンだね!」って言ってるの聞いたら…い、言い出せない。夢を壊しちゃう…気が…して。こんな奴が最強で…さーせん。えぇい!言うしかないよな!

「あー…エメットさん」

「ん?なぁに?」

「私です」

「……え?」

「私が、その…特別警備員…なんですよねぇ〜。なははは…」

笑顔のまま固まるエメットさん、不機嫌そうなノボリさん、クダリさん、ランクルス、ぼんやり私を見つめるインゴさん。い、居心地が!!居心地が悪いんやで!あー…筋肉隆々じゃなくてすまん…。でもある意味スーパーマンだからそこはまぁ…良かったね?なにが良いのかわからんけども!

「……May I ask your name?」

「…あ?」

いかん。ナチュラルに「あ?」って言っちゃった。だっていきなりインゴさんが喋るんだもん!無言だったのにいきなり喋るんだもん!!で…なんだって?め、めい…?日本語!日本語でお願いします!わたわたする私を見てクダリさんがくすりと笑みを零す。

「名前を教えてってさ」

「…な、名前…カオル、です」

「Ahー……カオルサマ?ワタシ、ハ、インゴ…デス。ヨロシク、オ願イシマス」

片言で、一生懸命に話すインゴさんがスッと私に手を差し出す。反射的にその手を握ると、少しはにかんだように笑うインゴさんに脳内のカオルがざわめいた。…あれ?この人……か、可愛いんじゃね?



「の、ノボリ…、本当に彼女なの?」

「…えぇ、カオル様こそ、このバトルサブウェイを守るお方です」

「そして!僕たちの大切な人!」

「(……彼女がポケモンと戦うっていうの?嘘でしょ?)」



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