あはー…今私は困っている。えぇ、そりゃもう盛大にな。最強と謳われたこの私を困らせるとはどこのどいつやと皆さんお思いでしょう。簡単です。外国人や外国人。さっきから私に向かってペラペラペラペラ話かけてくるスポーツ選手っぽい金髪の兄ちゃん。なんや、あんた何が言いたいんや。正直泣きそうです、いやまじで。誰か、誰か助けて。鼻から魂が出るんじゃね?と思った時である。私の背後から通る声が響く。

「May I help you?」

救世主、降臨のその瞬間に立ち会えたこと…私は誇りに思う。ゆっくりと振り返れば相変わらずの無表情な金髪碧眼のイケメン…インゴさんがそこにいた。思わず拝みそうになったがなんとか堪えた自分を褒め称えようではないか。そして同時にインゴさんを崇めようではありませんか…!!インゴさん…否!インゴさまだよインゴさま!!

「oh!ペラペラペラペラペラペラ!!」

申し訳ないが私にはこう聞こえるので仕方なくこの表現でいかせて頂くのをお許し下さいな。で、金髪の兄ちゃんが何やらペラペラ言うのを聞いて、インゴさんが何度か頷き、同じくペラペラと何かを話したあと、シングルのホームを指差した。…あの人、挑戦者だったのか。だったら私じゃなくてカウンターのインフォメーションに行けよな!!絶対あっちの方が英語わかんだろうが!そんな突っ込みをぐっと堪える私にウインクしながら兄ちゃんは去っていった。…な、なんだ最後のは…。呆然とする私にインゴさんが溜め息を吐いた。

「カオル様、大丈夫ですか?」

「あ…はい。いや〜助かりました!ありがとうございました!」

「いえ…。このような事がまたあれば、遠慮なくワタクシをお呼び下さいマセ」

ほんの少し笑みを浮かべたインゴさんは失礼します、と去っていった。…インゴさん、良い人やで…。でもあんた…インカム付けてないやん。どうやって呼べば良いんだよって話だ。念?念でも飛ばせばいいの?まじで?そんな馬鹿な!一人悩む私を呼ぶ、カオルちゃん!という声がした。この声は…。

「エメットさんか…」

「も〜…そんなに嫌そうにしないで!めっ!ダヨ?」

あざとい。あざといぞあんた。にこにこ笑顔のエメットさんを睨みつける。前回の事を忘れた訳じゃないからな。あれだよあれ。インゴさんのオノノクス混乱事件。どうやらあの木の実…ウイの実という渋さが売りのものらしくてな。渋いのが苦手な性格のオノノクスが食べて混乱したという、それなんてメタ発言?って感じだよな。つまりあのオノノクスさんは意地っ張りなのね。というかだな、その渋い木の実を私に食わせようとしたこと…私はいつまでも覚えとくからな…!!

「もう変な問題起こさないでくださいよ。面倒なんだから」

「分かってる!それよりさ、インゴとなに話してたの?」

カオルはかくかくしかじかを唱えた!▼本当に便利だわ。かくかくしかじか。静かに私の話を聞いていたエメットさんだったが、そっかそっか、となんとも嬉しそうに笑っているではないか。なんやねん。あんたの笑いのツボがさっぱりわからんですよ。そんな私に気づいたのかエメットさんがくすりと微笑む。

「インゴが他人に興味を持つのが嬉しくて、ね」

「…興味?」

「カオルちゃん、インゴと仲良くしてあげて」

よくわかんないんだけど、優しい笑みのエメットさんを見ていると無意識に頷いてしまっていた。な、なんだよ。その笑顔あんた…狡いじゃんか。てかさ、お願いされなくても…。

「せっかく出会えたんだから、インゴさんだけじゃなく…エメットさんとも仲良くさせてくださいよ」

縁を大切にしないとな。あんたらと出会えたのは、私が死んだから起こった奇跡なんだぜ?な〜んて、言わないけどな!!なはははは!っと、いかん!もうお昼休みになるやないか!

「エメットさんすまん!うちのボスたちにお弁当渡してくるんで失礼しますわ!」

「は〜い、またネ!」

手を振って私はお弁当を取りに走る。今日のお弁当は二人の好きな玉子焼きが入ってるから、きっと喜ぶだろうな。走りながら自然と笑みが零れる。へへ……早く、二人の元へ!!



(はい、今日のお弁当ですよ)
(わーい!いただきまーす!)
(いただきます。……これは!クダリ、玉子焼きでございますよ!)
(本当だー!やったー!!カオルありがとー!)
(どう致しまして!)


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