どこを見ても人、人、人。デパートはどこの世界でも賑わうものなのだな。ショッピングモールR9、今日は私の服を買いにここまでやってきた訳です。あ、デパートなのでチラーミィ達はお留守番だ。暴れられると困るからな。ただな…クダリさんがいるんだわ。完全なるオフに何故ついてきてるんだこの人は…と睨むが隣を歩くクダリさんは楽しそうに歩いている。スキップしそうな勢いに軽く引いたわ。

しかもだ。変装のつもりなのかキャスケット帽を被り、いつもの白いシャツにベージュのニットベスト、黒いジャケットを羽織り、とどめは伊達眼鏡である。なにこれ。ただのイケメンじゃん。チラッと見えるニットベストがセンスの良さを伺わせる。見過ぎたせいか視線に気づいたクダリさんがにんまり笑顔を私に向けた。

「ナマエ、どうかした?」

「…いや、私がどうしたと聞きたいですわ」

「んー?なにが?」

「なんで私の買い物についてきたんですか?」

その言葉にパチパチと瞬きをし、それからふにゃりと可愛らしい笑みを零す。その様子にはてなマークを浮かべる私の手を取り、指を絡めてキュッと握られる。俗にいう恋人繋ぎ。…うえええい!?混乱する私の手を引き歩き出すクダリさんの耳はほんの少し赤い。

「ナマエとデート、したかったんだもん!」

その言葉に私の顔に熱が一気に集まった。こ、この野郎…!不意打ちは卑怯やで。うっかり恋愛フラグが立つやないかい!


*****


突き刺さるような視線と殺気に何十回目かの溜め息を吐いた。そうだよね〜。帽子と眼鏡だけで誤魔化されるわけないよね〜。考えが甘かったよね〜。 マイガーッ!クダリさんのお馬鹿さーん!「この服ナマエに似合いそうだよ」と笑う彼はこの異様な空気に気づいていないようだ。今すぐ気づいてくれ。私の死亡フラグが確立してしまう前に。

早く帰ろうとクダリさんが選んでくれた服をレジに運ぼうとするが、それを笑顔でクダリさんが奪い去っていった。なんでや?と考える間に会計を済ませたらしいクダリさんが手提げ袋を持ってきた。そしてまた手を繋ぐ。…あれ?私…お金払ってない…けど。

「く、クダリさん!お金払いますよ!」

「だーめ。デートなんだから、女の子に支払いはさせないの!…今日は、僕に甘えて?」

「……ぐっ!!」

なんだよなんだよ…。そんな大人と子供の両方の顔を使いやがって…!死亡フラグと同時に恋愛フラグ第二段階目を立てようとしてるな!?って、わぁあああ!!女子共が怖いんですけどぉぉお!!もう駄目だ。あと数分の内に刺される自信が出てきたぞ。なにその自信嫌すぎる。

「…く、クダリさん…。お手て繋ぐのやめませんか?」

「え…。ナマエ…僕と手繋ぐの、嫌…?」

「嫌とかじゃなくて私が死ぬっていうか死ぬっていうか…死ぬっていうか?」

どうやらナマエは混乱しているようだ!▼涙目。私もう涙目やで。なんでこんなにすぐ死亡フラグが立つわけ?私なにも悪いことしてませんよ?むしろ良いことしかしてねぇだろうがこの野郎。

ギラギラどろどろした暗い光を瞳に宿す女子共の方を見て溜め息を吐く。お前ら見事に嫉妬まみれやないかい。その様子を見ていたクダリさんが「なんだ、そういうことか」と呟くと、私の手を引いた。急に引っ張られるもんだから私は見事にクダリさんの胸に倒れ込む。…は?なにこれ。クダリさんの顔を見れば相変わらずにんまり笑顔。なんでや!

「いきなりなにするんすか!?」

「ナマエが手を繋ぎたくない理由わかっちゃったから」

「わかったなら離しなさいよ!…って、うあああ!女子共の顔が般若に…!!死亡フラグが乱立してるるるる!」

こんな数の死亡フラグ回収出来る?…出来るわけねぇだろうがあああ!!離せ、と暴れるが逃がさないと言いたげにクダリさんは私の腰に手にまわし反対の手で私の頬を撫でる。に げ ら れ な い !この野郎と睨みつけるが効果なし。笑顔のクダリさんが口を開く。


「そんなフラグ、僕がベッキベキにへし折ってあげるよ?」


そのまま顔を近づけてくるクダリさんと悲鳴を上げる周りの女子共、そしてちゅーをされる私。なにこのカオスな絵面。そっと唇を離し、呆然とする私に微笑みかけたクダリさんが女子共に視線を向けた。

「僕の大切なナマエに手を出したら…許さないから」

見たこともない冷たい笑顔でそう言い放つクダリさんに恐怖した。やだこの人怖いんですけど。しかしそれより怖いのはそんなクダリさんを見て頬を赤く染める女子共だ。こいつらこんな事言われてもときめくわけ!?恋は盲目ってやつ!?シンジラレナーイ!…クダリさん、折れてないで。逆に新たな死亡フラグが立ったわ。

ちゅーされ損やで…。遠い目をして今日の晩飯はなににしようかと現実逃避する私であった。




後書き

流無さまリクエストの「そんなフラグ、僕がベッキベキにへし折ってあげるよ?」でした。しかしクダリさんはフラグを折らず新たに立てると!← 本当に可哀想な夢主であります…。

クダリさんまじ紳士!というの全面に押し出してみましたが…ど、どうなんだろ。紳士さが出てるといいなぁ…。紳士クダリさんを沢山妄想出来て楽しかった!ニヤニヤしながら書かせて頂きましたー!

紳士だけどたまに狼になれば…凄く…美味しいと思います…うへへ←

それでは…流無さま、リクエストありがとうございました!