気がつくと真っ暗な闇の中、私は一人佇んでいる。はて?私、寝てたよね?あるぇ?…しかし何も見えんじゃないか。自分の手足がちゃんとあるのか、それすらも確認出来ないくらいの暗闇。…私、私は、…存在しているの?もしかして、私…死んでるんじゃ…。ふいによぎったその考えに、血の気が一気に引いた。
そんな馬鹿な…!だ、だって、私はポケモンの世界に飛ばされてたじゃないか…!だから、だから…私は、ちゃんと…生きてる!

「生きてるに決まってるだろうが…!!」

そう叫ぶと、パチリと目が覚める。え…?あれ…私の部屋だ。起き上がって驚いた。めっちゃくちゃ汗かいてるやないですか…。ははぁ…なるほどなるほど、…夢だったのか。良かった…。はぁ、と息をはきだし汗で濡れた髪をかきあげる。…悪夢と自分の悲鳴で起きるとか、最悪過ぎだわ。

ちらりと視線を静かに寝息を立てる戦友…もとい私の大切な家族に向ける。…チラーミィ…白目やないか!寝てる時も酷い顔って…。全く、仕方のないやつだ。布団をかけてやり、静かに立ち上がる。…ちょっと、風に当たりたいかも。



「…なにが風に当たりたいだ。寒いわ…!!」

ベランダに出た瞬間後悔した。夜風がめっちゃ冷たい…!!厨二病全開な事を考えた三分前の私を殴打したい。寒いけど、すぐ部屋に戻るのは負けた気がする…。仕方ねぇ…。もう少し粘るか…。うん、大丈夫大丈夫。私冷凍ビーム食らっても風邪引かないしな。え?そういう問題じゃないって?…それにしても。

「ライモンシティ…煌びやかやで…」

深夜だというのに、ネオンの光はいつまでも輝いて…明るい街だわ、ライモンシティは。さっきの夢と真逆すぎるだろ。私の存在を否定しているかのような…深い深い闇。くそ…あんな変な夢見るから、変な気分になっちゃったよ…なははは。
むぎゅ。…今のむぎゅってなに?って思った方が沢山いると思うが私もその中の一人だということを伝えておく。…えっとな、なにかが…いや誰かが私を抱き締めているみたいなんだな。

「ノボリさんか?それともクダリさん?」

無言。はいはい無視きたこれ。おい、話かけられたら返事くらいしろよ!振りほどいて顔を見れば、キョトンとした顔の……ど、どっちだ!?あれ、わかんないんだけど。えーっと、と悩む私に構わず無言で抱きついてくるその姿にピンときた。

「…ゾロアーク?」

「……!!」

満面の笑みを浮かべて、頷いたのは二人に化けたゾロアーク。…ゾロアークなら、いいか。まぁ二人の姿をしているのがちょっとあれだ…恥ずかしいけどな…!!ぎゅうぎゅうと私を抱き締めるゾロアークに苦笑する。お前は他の二匹と違ってストレートだよなぁ。…あったかい。うん、…生きてる。

「…ひとりにならなくて良かった」

本当に、心からそう思う。新しい人生を歩むにしても…またひとりだったら今みたいな私になれただろうか?……やっぱり双子に出会えたり、チラーミィ、ランクルス、そしてゾロアーク。こいつらがいたから今の私がいるんだよな、うん。…って、わわわわ!ぞ、ゾロアークさん!?私の頬を両手で包み込むように添えられ、コツンと額を合わせてゾロアークが目を閉じる。互いの鼻が当たるくらいの距離に私は固まるしか出来ないわけで。

「ぞ、ゾロアーク…?…おぉ!?」

ひ、光ってる…!!!なんということでしょう。ゾロアークの身体を淡い光が包んでいるではありませんか。…なにこの超常現象。ヒィィ!わ、私も光ってるんですけど!あれ…でも、この光に包まれると安心するのは何故だ…?その時頭の中で聞いたことのある…低く通る声が響く。


「一緒にいるのは当たり前でしょ」


い、今のは…ゾロアークの声?相変わらず私の頬に触れるゾロアークが肯定するようにふんわり微笑んだ。それはノボリさんやクダリさんを真似た笑顔ではない、ゾロアークの笑顔。その笑顔に私の心臓がとくんと高鳴る。…く、くそー!うっかりときめいたやないか!

添えられた手をそっと外した私はそのままゾロアークの胸に飛び込む。見上げれば、優しさを含んだ瞳が私を見詰めている。お、お前…私をこんなにどきどきさせてどうするわけ!?あぁ、もう!

「…離れたいって言っても、許さんからな!」

我ながら恥ずかしい事を口走ったと思う。だがそれ以上に嬉しそうに頷くゾロアークに私は恥ずかしくなった。…て、照れるだろ!…もう少し、抱きついててもいいよね?




後書き

八代さまリクエストの「一緒にいるのは当たり前でしょ」でした。ゾロアーク夢初めて書きましたが…い、いかがでしたでしょうか?ゾロアーク夢といっても双子に化けてるから原型夢とも言えないですが…orzただ設定上、名前を呼ばせる事が出来なかったのが本当に申し訳ないです…。

夢主はポケモンには優しいのでお話が割と甘くなります。た、多分甘い!←

今回はちょっとネガティブな夢主。夢主も色々悩むはずです。でも皆がいるなら頑張れる。生きていける。守ってみせる。改めてその気持ちに気づく夢主を書かせて頂きました。楽しんで頂けたら嬉しいです…!

それでは八代さま、リクエストありがとうございましたー!