ズルズキンの事件後、本っ当に何もなく、だらだらと一日は過ぎていった。そして私の仕事は終わりましたよ。イェーイ!やっと帰れるわ!鼻歌混じりにノボリさん達の執務室に行きかけて、忘れていた記憶が突然思い出される。私、クダリさんにちゅーされそうになったんやったわ!!びっくりしたー…普通に忘れてたわ…。忘れる私もどうかと思うがね!…あの、まじ困った。

何故私が困っているかというと、一人で家に帰れないからだ。いやね…道が覚えられないのよ。方向音痴ではないんだが…ライモンシティって似たようなビルとかマンションが多くてな〜。文字も読めないわけだし…まぁスーパーとか日常で使ってる所は大体覚えてきたけど、此処はまだなんだわ。早く覚えないとな…。

てなわけで、だ。今私はノボリさんかクダリさん…どちらかと一緒に帰宅しているのだ。やっべぇわ…今日クダリさんだったら嫌だ。気まずいじゃん?…あ?一応私も気にするよ!私だって…お、乙女だし?まぁノボリさんには負けるがな。

って、うわあああ!悩んでる間に着いちゃったよ!う、うぐぐ…。もしクダリさんだったら…一人で帰りますって言ってみよう。控えめにノックをして、ゆっくりドアノブを捻り、中を覗いてみる。

「…お、おおおお疲れ様でーす。私帰宅したいのですが、ど、どんな感じでしょうか?」

マイガーッ!!めっちゃどもってしまったわ。自然な感じを装いたかったのに初っ端からやらかしたんですけど。そんな挙動不審な私に対して、不思議そうに首を傾げるノボリさんとジト目で見詰めてくるクダリさん。いや、あの、だからさ…理不尽だろって!頼む…頼むから今日はノボリさんであってくれ…!

「カオル様、もしや具合が悪いのですか…!?では急がなくてはなりませんね…。わたくしも準備致しますので少々お待ち下さいまし」

「…え?」

まじか。まじか!!あっははあ!いや〜、さっきまでの不安やらなんやらかんやら吹き飛んでいきましたよ。ありがとう、メシアノボリ!!てなわけで、どうやら今日はノボリさんと帰る事になるようだ。日頃の私の行いが良いからだよな。まじで。…気持ちが落ち着くまでクダリさんにはあまり近寄りたくないな…。この女たらしめ!!という様な事は顔には出さず、ノボリさんの準備が終わるまでゾロアークの後ろに隠れていた。…あれ?今日はクダリさんの机…書類が少なくて綺麗だ。まぁそんな日もあるんだろう…。

「お待たせ致しました。参りましょうか。…ではクダリ、後は頼みました」

「く、クダリさん。お先に失礼しますね」

「…また明日、ね」

「は、はい…」

扉を閉める間際、悲しそうな顔をした気がしたけど、…わ、私のせいじゃないんだからな!駄目だ駄目だ。考えるのは止めよう。ふるふると頭を振ってリセットさせる。…よし、とりあえず帰ってご飯作んなきゃ。意気込む私の手から鞄がするりと消えた。…き、消えただと!?バッと上を向くと私の鞄を持って首を傾げるノボリさん。


「どうしました?」

「いや…あの、ありがとうございます」

「気になさらないで下さいまし」

…あれ?なんかノボリさんが紳士なんだけど。普段のノボリさんはこんな事しないのに…あるぇ?もしかして心までイケメンになろうとしてるの?え?まじで?それって鬼に金棒だよな。置いていかれないように早足でノボリさんの元に向かった。




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