飴ちゃん食べ出したら本格的にお腹すいてきたなぁ〜…。コロコロといちご味の飴玉を転がす。段々と小さくなっていくそれを思い切り噛んでやる。本当はガリガリ噛みたいけど貴重な食料じゃん?でもやっぱり我慢出来んから噛み砕く。
「いてっ…!口の中噛んじゃった…」
あーあ、ノボリさんはまだ帰ってこないけど…なんとかマスターだから大丈夫でしょう。さて、もういっこ食べようかなとポケットに手を突っ込んだ時、子供の悲鳴が聞こえた。…おいおい、あいつら子供にまで手を出すのか?流石にそれは…見過ごせないわ。しかし丸腰じゃ危ないし…おや?
「こんな所に傘が…乗客が落としたのかな?まぁいいや、貰います」
ビニール傘を拾い、小さな梯子を使い見事線路から脱出した私は、悲鳴の元へただただ走った。
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子供の悲鳴と男の怒号が段々近付いてくる。むむ…この角か!しっかり握り締めた傘を構えて飛び出した。
「良い大人が何してやがる!!」
「だ、誰だ、貴様は!!」
突然現れた私に戸惑うプラズマ団員…長いのでプラ男と名付けることにしよう。そのプラ男とモンスターボールを必死に守る幼稚園児の少女がいた。よ、幼稚園児だと!?こらこら、プラ男!そんなに小さな子供に手を出してるなんて私はびっくりだよ!このド変態め!!
しかし、戸惑ったのは少女も一緒だったようでボールを握る力が弱まったその隙にプラ男が彼女のボールを奪い、走り去って行った。…おぉ…ばっちり私のせいやないかい…。オロオロし出す私と泣き出す少女。
「ちょ、ちょっと!少女よ、だ、大丈夫か!?」
「あ、あたしの…ポケモン…取られ…うぅ…やだ!やだ!!…帰ってきてよぉ…」
「…少女」
私の堪忍袋の緒がブチ切れた。プラ男…お前は私を怒らせたッ!…でもその前に。フゥと息を吐き、少し頭を冷静にしてポケットを探る。手にした飴玉を少女の手に握らせる。少女はポロポロ涙をこぼしながら、こてんと首を傾げた。頭を撫でながらしっかりと少女の目を見詰める。
「私が君のポケモンを取り返す。だから…これ食べながらちょっと待っててくれる?」
ずっとポケットに入ってたからなぁ…ちょっと生暖かいのは目を瞑ってくれよ。飴玉と私の顔を何度も交互に見る少女に笑いかければ、ぱぁ、と少女の表情も明るくなった。
「ありがとう、おねぇちゃん!」
「おう!じゃあ、待っててね!」
ぽん、ともう一度頭を撫でてやり私はまた走り出す。目指すは…プラ男。あの野郎は許さない。…あら?私なんか忘れてる気がする…まぁいいか。プラ男…首を洗って待ってやがれ!
「…カオル様!!何処に行かれたのです!」
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