どれくらい走っただろうか。さっぱり分からないが結構な距離を走ってると思う。が、意外と疲れていない自分に驚いている。体育のマラソンでは開始十分でバテていた私がこんなに長いこと走ってられる訳がない。つまり…。

「神様か…ありがとうございます…」

きっと神様だよね。多分体力も人並み位にしてくれたかもしれない。神様、まじ感謝。私の目の前を走るノボリさんも一向に疲れた様子を見せない。流石……あれ、なにマスターだっけ?ポケモンマスター?違うか。一人で唸る私に気付いたのかノボリさんが一瞬私の方に視線をやった。

「どうかなさいましたか?」

「いや、お気になさらず。…しかし、結構走ってるけどまだ着かないんですね」

「そうですね…。あと一キロ程だと思いますので、ひた走って参りましょう」
一キロ…。まぁこんだけ走ったらもう少しって感じだけど、ノボリさん、女の子に無理はさせちゃあいけないぜ。私には神様の加護があるから大丈夫だけどね!へへん!とかなんとか考えてたら向こうに光が…。出口か!よっしゃ、ラストスパート!ノボリさんと共に光に向かって突っ走る。なんか、ちょっと青春してるみたいじゃない?やば、テンション上がってきたぜ!

「ゴール!!うぉおお!?」

両手を上げガッツポーズを決める私を何故かノボリさんが引っ張り、物陰へと押し込んだ。めっちゃ尻を打った。ノボリさん…女の子にそんなことしたら駄目だって…ん?ざわざわと騒がしい…時々怒号のような声も聞こえる。こいつは一体…。

「どういう事ですか、ノボリさん」

「…恐らく巷を騒がすプラズマ団でしょう。神聖なサブウェイ内でこのような…わたくし許しません!!」

「あー…プラズマ団…」

ノボリさんの鬼のような顔をスルーして…そろりと顔を出して見ると、確かにゲームで見たような不思議な格好した人が沢山いる。負けたらプラーズマーって叫ぶ人達だったはず。…あいつら…人のモンスターボールを奪ってやがる。なるほど、こいつらのせいで列車は止まったんだな。しかし、見つかるとマズいしどうしようか…。むむ……ん?ちょ、ノボリさん?

「どこ行くんですか?」

「…様子を見て参ります。他のお客様の安否も気になりますので。カオル様には大変申し訳ないのですが…」

「ここにいろって事ですよね?りょーかいです!」

敬礼の真似をしてノボリさんに笑いかければ、少し驚いた様に目を見開いたがすぐにキリッとした表情を浮かべて、綺麗に敬礼を返してくれた。見れば見るほどイケメンだなって思う。しかしもみあげが気になる…ゴニョゴニョ。

「行って参ります!絶対そこを離れてはなりませんよ!」

「あーい」

多分。恐らく。きっと。離れないと思います。何かしら起きなければね。ノボリさんを見送った後、改めて私が置かれている状況を整理してみようと思う。まず、私は一度死んだ。これは間違いでしょ。そんでもって神様にポケモンの世界に飛ばされ、ノボリさんに出会う。おわり。…なんてこったい。整理出来てないじゃないか!!あ、そういや私今何持ってんの?ゴソゴソとポケットの中を探る。

「…またティッシュと、携帯に…あ、飴ちゃん!?」

駅前で貰ったティッシュと、圏外な携帯、数個の飴玉。どうしよう。どう考えても私生きていける気がしない。

「だ、大丈夫だよね。だって生きていける力をくださいって言ったもんね」

か、神様…ちょっと不安になってきたよ。コロンと口に飴玉を転がした。あ、いちご味だ。



.


prev next
back

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -