ちわーっす。バトルサブウェイ特別警備員のカオルだよ。ってなんやねんその肩書き!意味分かんないよな!大丈夫、私も意味分かってないから。混乱し過ぎて現実逃避すら出来てないからね。えっと…とりあえず今日の私の不運な出来事を思い出してみようか…。全ては…弁当を忘れて行ったあの二人のせいなんだ。

「おやまあ…二人して弁当忘れてるやないか。ちょ…ゾロアーク。いきなり抱き付くなってば…」

テーブルに置かれたままの二つの弁当をさてどうするかと思案する私を背後から思い切り抱き締めるのは一週間程前、この家にやってきたゾロアークである。

いやね、抱き付くのは一向に構わん。好いてくれてるんだなって嬉しくなるからな。問題は今の彼の姿だ。そうなんだよ…何故か彼はノボリさんとクダリさんの姿に化けているのだ。今日はへの字口なのでノボリさんの様だ…って違う違う。冷静に分析してる場合じゃないわ。


「良いですか、ゾロアーク。ノボリさんとクダリさんに化けて抱き付くのは止めなさ…あぁああ…涙目になってるやないか!わかった…わかった!私が悪かった!」

このやりとり、五回目やで。泣かれると弱いのよ私!うぅ…ゾロアークの愛情表現は過激なんだ…。この間なんかほっぺたにチューされたからな。たしかあの時はクダリさんの格好してたかな?私見事に固まったからね。ランクルスとチラーミィも呆然としてたわ。いや〜…ノボリさん達に見られなくて良かったよね。だって私顔真っ赤だったから。

って、今はんなことは良いんだよ。問題は弁当だよ弁当!ううむ…かなり嫌だが、しょうがないか…本っ当に行きたくないけど持ってくしかない。

「よし…じゃあ行くか…」

覚悟を決めて、いざ参ろう。恐ろしい女子共の巣窟へ。今日は一人じゃないから大丈夫…多分。きっと。恐らく…。ヤバいわ…これ女子共恐怖症やで。



*******



ふわふわ浮かぶランクルスと肩に乗るチラーミィ。そして土下座してお姉さんに化けてもらったゾロアークの四人でやってきましたバトルサブウェイ。うぐぐ…早速トラウマが蘇るわ…。既に帰りたい。もう引きこもりだったあの頃に戻りたい。…鉄道員さんに渡してさっさと帰ろう。てか肩痛いわ。え?チラーミィあんたもしかして太った?思った瞬間ギロリと睨みつけられてしまった。…チラーミィがいるなら女子共は倒せる気がしてきた。


恐る恐るサブウェイ内に足を踏み入れてノボリさん達を探してみたが予想通り居なかった。なんとかマスターだからか…なるほどな。じゃあこの弁当を押し付けて帰るぜ!!…で、ここ何処じゃろ。どうやらウロウロしている間に地下鉄のホームに来てしまったみたいだ。何処行きなのかはわからん。字が読めんからな。

…あれ!?私切符持ってないけどここまで来ちゃったよ!?ま、まぁ怒られなかったからいいか。…つーか、なんかここにいるトレーナー達、目がギラギラして怖ぇな。…さては全員廃人だな!やっべぇ…近付かないようにしよ。

「…あ、みっけ!!」

受け付けらしき所でトレーナーと話をしている鉄道員さんを見事発見した。よしよし、後は事情を説明して帰るのみ…。計画通り…!そう計画通り行くはずだったのに…あの暴走したポケモンさえ現れなければ。


突然電車の急停車する音がして顔をしかめる。その後大きな爆発音と、地を揺るがすような低く恐ろしい鳴き声が響いた。なんや!?いきなりなんやの!?何かが爆発したのか土煙が舞い上がり視界がめちゃくちゃ悪い。てか何も見えんわ。まさに大混乱である。逃げ惑う人達と一緒に私も避難しとけば良かった…。

「…まじかよ」

また面倒くさい事に巻き込まれた気がする…。何なの?まじで主人公的なポジションにいるわけ?そういうの勘弁だから!!ガリガリと頭を掻きながら空に浮かび大きく吼えるポケモンを見詰めた。六枚の黒い羽、紺色の体毛、廃人達以上にギラついた赤い目、そしてヤマタノオロチを連想させるような三つ叉の首。イエス!サザンドラ!

なんでこんな事になってんの?と首を傾げる。てかよ、こいつのトレーナーは何処に行きやがったんだよ!…あ、電車の中で気絶してるっぽいエリートトレーナー(長いのでエリ男と略す事にする)発見。…お前のサザンドラか!チッ…。なんで私がこんな面倒くさい事をせにゃならんのだ!エリ男、さっさと起きろや!!あ、弁当は死守せないかんよな。


「ごめん、ちょっと耐えてて!すぐ戻る!」

チラーミィ達にそう告げると先程の鉄道員さんの元へ走った。視界が悪いわ全く!…いたいた。声を張り上げ乗客の誘導をする鉄道員さんの肩を叩いた。あれ、さっきの人じゃないや。まぁええか。ずいっと二つの弁当を差し出す。

「すみません。これ、ノボリさんとクダリさんの弁当なんで後で渡してもらえます?」

「はぁあああ?お嬢ちゃん何言うてんねん!危ないやろ、早よ逃げや!」

おいおいおい…誰がお嬢ちゃんや。これでも成人してますから。三年前に成人してますから。カチンときた私は無理矢理弁当を押し付けてやったわ。またもや「お嬢ちゃん!」と声を上げる鉄道員さんに苛ついたが今は戻る事が優先事項だ。

「じゃ、おっさん頼んだかんな!」

「誰がおっさんじゃ!おい、待たんかい!」


だが断る。誰がおっさんの制止なんか聞くかっての!おっさんは大人しく乗客の安全確保でもしてろよな。あのサザンドラは私が引き受けてやるからさ。…あれ?私日に日に男前度が上がっていってね?誰よりも男前になるとか嫌なんですけど。




「…なんやねんな、あの嬢ちゃんは…」

「クラウドー!お客様の避難誘導ありがとー!」

「お怪我をされたお客様はいらっしゃいませんでしたか?」

「煙で目やら喉やら痛めるお客様はいてはりましたが大きな怪我はされてないみたいですわ。あとは…お二人に弁当が届いてまっせ」

「…ノボリ、急ごう」

「…えぇ、クダリ。クラウド、申し訳ございませんが引き続き避難誘導をお願い致します」

「あ、ちょ…ボス!…一体なんやの?」


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クラウドさん…会ったことないっす←
そしてコガネ訛りは難しい…。



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