私、カオルはポケモンの攻撃を受けても怪我をしない身体をしている。てなわけで現在壁役として大活躍中であります。なんか知らんがゾロアークが火炎放射とかしてくるんだけど。きみ、あくタイプだよね?なんでそんなの覚えてるわけ?え?ご都合主義?…まぁそうだよね。私ももう考えない事にする。
あ、ちなみに火炎放射は私に直撃してますわ。身体は燃えないけど、ちょっと服が焦げだして違う意味で慌てている。貴重な服が…!!!!くぅ…チラーミィを守る為なら…仕方ないか。

「…チッ。どうするか…」

優しかったお姉さんの姿を思い出して…攻撃出来ないんだけど。ヤバいなぁ…。私の背中にしがみつくチラーミィも地味〜に技を食らってるから長引かせたくないが…困った。振り下ろされる鋭い爪を避けながらうんうん唸るが解決策は浮かばない。そんな私は何故かチラーミィに頭突きをされた。見事後頭部に直撃ですよ。おま、ちゃんとやれってこと?…わかったよ。やりますよ。って、わわわ!なんだありゃ!?


ゾロアークを中心に、黒いオーラが渦巻いているではないか。それらは時折パチパチと黒い電撃の様なものを放ちながらやがて球体となりゾロアークの正面に浮かび上がる。…あー、なんか分かった気がする。あれだよな。ゾロアークの固有技…。

「ナイトバースト…」

瞬間、大きく雄叫びを上げたゾロアークは私に向けてそれを放った。うおっ…!?す…凄い!!ビリビリと身体中を衝撃波が襲い、思わず片膝をついてしまった。こ、こりゃいかん。早々に決めてしまわんと…。チラッとゾロアークを見ればどうやらヤツも疲れてきている様子。よし、今しかない。肩で呼吸するゾロアークを指をさした。

「チラーミィ、ハイパーボイス!日頃の鬱憤を晴らしてやれ!」

そう言うとチラーミィはすぅ、と大きく息を吸い込みハイパーボイスを繰り出した。そのハイパーボイスなんだが、某ガキ大将の歌う時のボエ〜!って感じで正直私まで頭が痛くなったが気合いで耐える。

耳を塞ぎ苦しそうな表情を浮かべるゾロアークに心の底からすまんと謝罪し一気に間合いを詰め、ゾロアークの肩を掴みカオルさん渾身の頭突きを喰らわせた。ゴチィ!と凄い音がして、ゆっくりゾロアークは崩れ落ちていった。…勝ったけど嬉しくないわ。

「…だ、大丈…ッ!」

う…なんだ、これ。私の頭の中に何かが濁流の如く流れ込んでくる。な、なにこれ…!誰かの怒鳴り声が鳴り響き正直頭が痛くなってきた。うげ…吐きそう。なんて?なに叫んでるのか分かんないっての!ギリッと歯を食いしばった時である。何かが私を包み込んだみたいに、ふわりと身体があたたかくなって痛みが和ぎ、同時にけたたましく響いていた怒鳴り声も小さくなっていく。そして、最後に聞こえた言葉。


"やはり、おまえもわたしをおいていくのか?"


ハッと、視線を移せば先程と同じように悲しい目をしたゾロアークが、静かに私を見詰めていた。そか…ごめん、本当にごめんな。するりと手を伸ばし、ゾロアークの頬に触れてみる。ピクンと身体を揺らしたが嫌がる様子は見せないのでゆっくり、ゆっくり撫でる。…たくさん傷付けてごめんな。あん?な、なんか…視界がぼやけてるんだけど。…わ、私、ないてるやん。

「ごめ…!」

私が泣いてもしょうがないのに、アホみたいに涙はぽろぽろと落ちてくる。馬鹿、おま…ちゃんと仕事しろよ、私の涙腺。ごめん、ごめんと呟きながら涙を止めようとするが止まんねぇわ。あーあ、なんだよこれ。…え?服の袖で涙を拭う私を静かに見詰めていたであろうゾロアークがポンと私の頭に手をやった。

驚いてその顔を見れば少し困った様な表情を浮かべ、怖々と私の頭を撫でてくれた。…そんな壊れ物みたいに扱わなくて大丈夫なのに。なんだか可笑しくて思わず吹き出す私。泣いていたのに突然笑ったからだろうか、ゾロアークが不思議そうに首を傾げる。全く…さっきまでの凛々しい姿は何処行ったんだよ。

「…なぁ、ゾロアーク。私と一緒にこないかい?」


優しいきみにこれ以上寂しい思いはさせたくない。これは私の本心。一人で生きるのが寂しいって事、私はわかっているつもりだ。…だからさ…。


「私と家族になろうぜ!」


まぁヤンデレと暴君がいるけど…きっと大丈夫!きっと楽しいからさ。な?と笑いかけると、ずっと戸惑い視線を揺らしていたゾロアークが小さく頷いた。え?まじで?本当に…ええのですか?私…きみに頭突きかましてしまったけど…本当にええの…って、うおおお!?だ、ダブランが…ダブランがランクルスに進化してるんだけど!?え、おま…闘ってないじゃんか…いや今はもう気にしないでおこう。えっと…お、おめでとう?

腕が生えて全力で甘えてくるランクルスを撫でれば、そいつばっか狡いだろー!!と噛みついてくるチラーミィ。いいか、チラーミィ。お前はな、もっと違う感情表現をしなさい。ん…?視線を感じる…あ。視線の元を辿るともぞもぞ、そわそわ身体を動かしているゾロアークに気付きその姿に驚き以上に、自然と笑みが零れた。スッとゾロアークに両手を広げる。


「おいで?」


直後衝撃ががが。物凄い勢いで抱き締められたのだ。も、もふもふやで!意外ともふもふやで!さてこのゾロアークさん。チラーミィとランクルス諸共ぎゅうぎゅう抱き締めているので私カオルは苦しい。幸せだけど苦しい。…あ。ノボリさん達の晩飯忘れてたわ…。


「う…うぐぐ。お、お前ら…そろそろ家に、帰るぞ!」


さてさてゾロアークをどうやって連れていくか。いや、まぁ…方法は一つしかないよね。そうだよね。…よし、ダッシュで帰るか!…今は亡き父よ、母よ。カオルにも家族が出来ました。ヤンデレと暴君と、大きな狐さんです。




「ただいまです!急いでご飯作りますね!」

「あれ?カオルが二人…?」

「…空腹のせいで幻覚を見てしまっているのでしょうか?」

「ちゃうわ!後で説明するんでちょっと待ってて下さい!」



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ちなみにゲームと違いゾロアークは♂です。どうでも良い小ネタすみません/(^O^)\



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