チラーミィとダブランを小脇に抱えて全力疾走する私を行き交う人がめっちゃ見てきたけど気にしない事にします。…ついた。キャンピングカーはあの日と変わらず静かに森の中に佇んでいた。そしてチラーミィの酷い顔!▼が炸裂中である。そんなにお姉さんが嫌いなの!?
久し振りだから…なんか緊張するな。控えめにコンコン、とノックする。暫くしてゆっくり扉が開き、お姉さんが顔を出す。どうも、と会釈すれば驚いた様に目を見開いた彼女がキャンピングカーから飛び出し、なんと私をぎゅう、と抱き締めたのである。これにはカオルさんもびっくり。

「お姉さん…。お久し振りです。私、就職出来ましたよ!だから…」

なかなか来れなかったんです、と言い終わる前にお姉さんが思い切り私を突き飛ばした。ええぇぇええ!?ドサッと尻餅をついた私はポカンとお姉さんを見た。そんな私を守るようにチラーミィとダブランが前に立つ。は?なんなの?カオルさん置いてきぼりなんですけど。見事にぼっちな私をお姉さんがキッと睨み付け、人間とは思えない甲高い声を上げた。


「…な、何事だ!?」

ぐにゃりと視界が…空間が歪んだと思うと、キャンピングカーとお姉さんは消えていて、お姉さんの代わりにあるポケモンが立っていた。もうね、私はこれでもかと目を見開いたよ。黒い狐の様な体に、ボリュームのある赤いたてがみ、そして赤い隈取りを施された様な瞳。なんてこったい。そうか…こいつ等には分かってたんだ。

「ゾロアーク…」

お姉さん…もといゾロアークがもう一度吼えた。なんだか、その鳴き声は悲しそうで胸を締め付けられる。ど、どないしよ!?腰を労りながら立ち上がれば、ゾロアークは身を低く構え臨戦態勢を取り、低い声で唸っている。戦いは回避出来ないとな…。でも…なんでなん?なんで、そんな悲しそうな目をしてんの?…仕方ない。やるしかねぇか。あ、その前に。

「ダブラン、お前は待機。ゾロアークはあくタイプだから捻り潰されるからな」

明らかにショックを受けるダブランを苦笑しながら撫でてやる。ごめんな、目の前でこうかはばつぐんだ!▼ってなるの嫌だからさ。てなわけだ…。やる気満々で上機嫌なチラーミィを見やる。…楽しそうだな、お前は。


「おっしゃ!チラーミィ、いくぜ!」

おうよ!!と言わんばかりに声を上げるチラーミィと共にゾロアークに向かっていく。私はトレーナーじゃない。だから指示するだけなバトルはお断り。なのでポケモンと共に戦う。手持ちなんて呼び方は嫌いだし…。てかまずボール持ってないしな。なんつーのかな…"戦友"って感じかしら?まぁ、こんな事出来るのはチート設定な私だけだろうと思うのでよい子は真似すんなよ。




「ノボリ〜…お腹すいたよ〜」

「クダリ…カオル様が帰られるまで我慢なさい」

「そう言うノボリのお腹すごい鳴ってるよ!」

「お黙りなさい!」



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手持ちって呼び方なんか物みたいに聞こえるんですよね…。私だけかもしれませんが\(^O^)/←



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