…あーあ、降り出したか。予想以上に買い物に時間が掛かったから覚悟はしてたが…げんなりするな。荷物を持って店を出れば大粒の雨が地面を叩きつけていた。すっげぇテンション下がるっての。マンションの近くの薬局が定休日で遠出してきてげんなりしてたのに追い討ちかけられたわ…。

舌打ちして大量の買い物袋を握り締めた。ま、力強くなったからそんなに重く感じないけど憂鬱過ぎる。…まぁ帰るしかないわな。片道約一時間…うへぇ、数字にするんじゃなかった…より憂鬱になるじゃないか。私の馬鹿やろう。



*****



雨の勢いは変わらず、もはや傘をさしている意味がないように思える。えぇ、私もうずぶ濡れですわ。なにこれ。次は私が風邪ひくんじゃね?うわわわ、また看病イベントが起こるやないか。それは阻止させて頂きます、はい。ま、なんとかは風邪引かないっていうし大丈夫だろうけどな。

…バスとか乗りたいけど私乗れないんだよね。字が読めないから。なははは。いや笑い事じゃないんだけど。この世界の文字読めないし書けないんだけど。だって文字が記号みたいなんだぜ?言葉は通じるのにそれなんてイジメ?って感じだ。…おっと、心の中でぶちぶち文句を言ってる間にもうマンションが見えてきたではないか。

「薬飲ましたら風呂はいろ……あん?」

マンションの入り口に…なんか立ってるんだけど。雨のせいで視界が悪いな、とよく目を凝らして見るが…あれは…白い、人?あばばば…不審者?不審者なのかい?いや、あの、早くどっか行ってもらえますか。そんなあんたね、傘もささんと突っ立ってさ…風邪ひくよ?私一応そのマンションの住民なんですよね〜…。だから凄く邪魔というかまじで邪魔……え。ちょ、ちょっと…嘘だろ?近付くにつれ、はっきりするその人物に私は急いで駆け寄った。

「クダリさん!!馬鹿かあんた!!なにしてんだよ!!」

不審者と思っていたのは、パジャマ姿のままずぶ濡れになったクダリさんだった。しかも素足って…馬鹿やろう。傘もささず、ボーッと突っ立っていた彼の腕を掴みマンションの中へと引きずり込む。つめてぇ…!!…いつから外にいたんだ!?と、とりあえず…風呂に入れた方が良いよな!?早くエレベーター動けー、と念じる私の隣のクダリさんがぽつりと呟いた。

「よかった…」

「…なにがじゃい。って……く、クダリさん!?」


ちょ、ばか。あんた、ぶへぁ!!ずぶ濡れのクダリさんがずぶ濡れの私を後ろから抱き締めた。うわぁー。なんてことだ。ビチョビチョで気持ち悪いよ!などと失礼な事は考えるが口には出すのは止めとこうか。

なんか…クダリさんの様子が変だし…てかなんで抱き付かれてんの私?荷物を持って身動きが取れない私をぎゅうぎゅうと抱き締めるクダリさんにどうしたんすか、と聞いても見事にスルーされ理由がよくわからんのです。とりあえず、あれだな。静まれ、私の心臓。止まらん程度に。





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