いや〜…我ながら美味そうだわ。コトコトと煮込むお粥からお出汁の良い匂い。病人ということなので、お粥と梅干しだけが良いかと思うがさ…味気ないじゃん?てなわけで、昆布から出汁を取り溶き卵を回し入れたものを作ってみた。多分…美味いはず。…よし、じゃあ持っていってやりますか。えぇと…取り分け用の茶碗とレンゲ、土鍋…と、スポーツドリンクも持ってくか。それらをお盆に乗せてクダリさんの部屋へと向かった。

そろりと扉を開け、様子を見ると先程よりぐったりとしたクダリさんがベッドに横たわっている。おおぉ…具合悪そうやないか。クダリさん、と声を掛ければ視線をこちらに向けて力無く笑みを浮かべた。…おおぉぉぉ…だ、大丈夫かぁぁあ!?

「…お、お粥食べられますか?」

「うん、たべる…。あのね、僕、カオルのご飯、ずっとたべたかったんだよ」

な、なんだ…どういう事だ!?クダリさんが、凄く…可愛いです…。ハッ!!いかんいかん…。これは風邪を引いて弱っているから見える幻想なんだ。だからときめくなカオル!!弱々しく笑うクダリさんのベッドの脇に座り、上半身を起こそうとするクダリさんを手伝ってやる。ちょ、ちょっとドキドキするんだけど。ばか、静まれ、私の心臓…あ、でも止まるのはやめてね。死ぬから。

「…熱いんで気をつけて食べて下さい」

「え?カオルがたべさせてくれるんじゃないの?」

おま、馬鹿やろう!そこまで私が面倒看るわけ…うぐぅ!?そんな…そんな目で見るな…。そんなキラキラして潤んだ目で私を見るな…!はっ…私ったら…無意識にレンゲを手に取ってるやないかい!うぐぐ…恐るべし看病イベント…!仕方ない…。土鍋の蓋を取ればふわっと立ち上る湯気と美味しそうな匂い。隣のクダリさんが美味しそう!と嬉しそうに笑う。

と、ときめいてない私はときめいてない…。レンゲでお粥を一口分掬って、ふうふうと冷やし…ほらよ、とクダリさんの口元に運ぶ。クダリさんは口を開けて、パクリとお粥を食べてくれた。うおぉぉ…な、なんかめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!

「おいしい…。カオルは本当に料理作るの上手…」

「……っ!!!!!!」

のおぉぉぉ!なんだこのクダリさんは!!脳内で小さい私がのた打ち回って悶えている。この破壊力は半端ねぇ…。危うく私のハートが持っていかれそうだ。…と、盗られてなるものか!そう心に誓い、餌を待つ雛の様にあんぐりと口を開くクダリさんにお粥を食べさせていった。
どうやら食欲はあるみたいでクダリさんは綺麗に平らげてくれた。作った側からするととても嬉しいが…無理して食ったんじゃねぇだろうな…。クダリさんを見るが満足そうな表情を浮かべている。…よかった。あ、そういや…薬が無かったな。後で買ってくるか。薬よりぐっすり寝る方が良いよな。

「クダリさん、さっさと寝て下さい」

「カオル、もうちょっと優しく言えないの?」

「これでも優しくしとるわ。病人は早よ寝なさい」

さて、洗面器と土鍋達を持っていくか。…?なに?手に違和感……デジャヴ!?なんだよ…この双子は…人の手を掴むってのがあんたらの中で流行ってんの?いやまじでそういうの止めた方がいいよ!…うぅ、しかし相手は病人なんだよな。なんですか?と少し悲しそうに笑うクダリさんを見つめる。

「僕が寝るまで、ここにいて?」

「……把握した」

「ありがと、カオル」

ふにゃりと嬉しそうに笑うクダリさんに釣られて自然と上がる私の口角。駄目だな。自分が思っている以上に私はこの双子に絆されているかもしれん。安心した様で、私の手を握ったまま寝息を立てるクダリさんは天使に見えた。いやきっと気のせいだよな。風邪引いて弱っているからそう見えるんだよな。…はぁ、薬買いにいかんとな。




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