夜の公園のベンチにボケーッと座っている私。律儀じゃね?私意外と律儀じゃね?ちゃんとノボリさんに言われた通り、昼間のベンチに座って待っている。いや…流石に無視したら可哀想じゃん?そうだよ。別に彼等の話信じてないしー?だから急いで水浴びしてきた訳でも、お姉さんに畳んでもらった黒のシャツを着てるわけない…し。…あぁ、今夜もネオンがぴっかぴかだねぇ。この町は。軽く現実逃避する私の耳にコツンコツンと聞き覚えのある足音が聞こえた。

「来たか…」

「カオル、遅くなってごめんね。…あー!!それノボリのシャツだ!さっきは僕のだったのにー…なんでなんでなんで!?」

こらこらこら。そんなに騒がないで下さい。見なさい、通行人の冷たい目を。夜の公園でうるさくしたら近所迷惑ですからね……あの、本当いい加減黙れ。あんまり騒ぐとな、俺の右手が光って唸る…!しかし、私のシャイニングフィンガーの出番は無く遅れて現れたノボリさんによってこの騒ぎは収められた。流石ノボリさん、容赦ないわ。


「クダリ、お止めなさい。カオル様、大変お待たせして申し訳ございません。ではお連れいたしますのでこちらへ」

「あ、はい…」

ほんの少し泣きそうな(でも笑顔なんだよね)クダリさんをスルーして、ノボリさんの後についていった。あ、チラーミィとユニランは眠たそうにしてるから私が抱っこしてる。既に手がプルプルしてきたが愛でカバーである。…だがあれだな。こんなにしっかりライモンシティを歩いたことがないからとても新鮮だ。いつも?いつもはハローワーク行って森に帰るしかしてなかったからね。…私はもののけ姫か野生児的な何かか?ちょっと錯覚してしまうね。じゃあアシタカはこの二人か?お前達は私に職を与えられるのか!!

…いやね?私もわかってるよ…この二人に割と八つ当たりしてるのは。だから睨んでごめんね、と心の中で謝っておく。どうも…さーせんした。特にクダリさん…さーせんした。その背中をガン見していたからか、急に振り返った彼は相変わらずのニンマリ笑顔を私に向けた。

「どうかした?」

「背中にデスマス憑いてますよ」

「うそ!?」

「うそ」


こんな無意味なやり取りを繰り返していたが、急に二人の歩みが止まった。…どうやら目的地につい…た。は?なにこのアホみたいに高いビル、ま、マンション…?え?ちょ、ま。え?よくよく周りを見渡せばなんだかお金持ちが沢山居そうな雰囲気…えっと…高級住宅街的な?的な?まじかよ…。青ざめる私に首を傾げる二人…あ、あんたら…この雰囲気が怖くないってのか!そうか…あんたらも同じような金持ちか…だから平気なのね。確かになんとかマスターってボンボンそうな名前だしな。

ホテルみたいにとんでもなく綺麗なエントランスを抜け、エレベーターに乗り…二人がある部屋の前で止まった。こ、ここなのか?本当に衣食住付き、ポケモン放し飼いOK、住所?なにそれ美味しいの?な私を雇ってくれる人が…い、いるの…か?

「さて、お待たせ致しました。こちらがカオル様のお勤め先となります」

「今更ながら…ありがとうございます。信じてなかったし、結構…酷い事を言った気がするけど…」

「大丈夫!僕達、全然気にしてない!言ったでしょう?カオルにお礼がしたいって!」


…あれ?クダリさんが天使に…?いや見間違えだな。後でしっかり目を労りましょう。

「わざわざ送ってくれてありがとうです。私頑張って働きますので…どうぞお帰り下さい」

後は私がやるから、大丈夫っすよ。と二人に頭を下げるが何故か一向に帰る気配を見せない。いや、帰れよ。何?そんなに心配してくれてるの?いやいやいや、私これでも成人してるから大丈夫だから。なんでや、と首を傾げるがその様子をクダリさんがとても楽しそうに笑っている。…なんでや!

「ノボリ!」

「承知いたしました」

ゴソゴソと鞄の中を探り、一枚のカードを取り出し、そしてそれを扉にかざした。ピッ!という電子音の後にガチャ、と鍵が開く音がした。…鍵が開く音…だと!?鈍い私は今のでやっと気付き、二人を見ればニンマリ笑顔とへの字の口が私を見詰めていた。優しさを含んだその瞳に思わず溜め息を吐いた。もちろん嫌味的なものではなく、あんたらって人は…ってな感じの良い溜め息。…溜め息に良いも悪いもあるか知らんがね。

「…このような方法しかわたくしには思い付かなかったのです。申し訳ございません」

「何言ってるの、ノボリ!僕、すっごく良い考えだと思ったよ!…さぁ、カオル!入って入って!」

わ、ちょっとちょっと!押すな押すな!落ちる…落ちるんだよ!チラーミィが!…そんなこんなで、どうやら私はこの二人にお世話になり、お世話する事になるようだ。…なんてこったい。でも、ありがとう!



「ようこそ、カオル様。…歓迎致します」

「ここはもう、君達の家でもあるんだ。くつろいでね!」

「(こ、このゴミの山でくつろげと!?)」


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やっと此処まできた\(^O^)/
まぁテンプレ通りで詰まらんかもしれませんが、良ければ読んで下さいませ!



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