今私は呆然としている。それは何故かって…そりゃあ、この映像見たら呆然とするわ。アホみたいにパソコンの扱いに慣れているクダリさんが操作して、映し出されたのは私がこの世界に来た日のシングルトレイン内の映像である。最初は誰も乗車していない閑散とした車内だったが、突然眩い光が車内に満ちる。映像なのに思わず目を瞑るくらい眩しかった。そしてその光が消えた後、グースカ眠る私が座席に座っていた。
「…へぇ〜」
「…意外と冷静でいらっしゃるのですね。もっと取り乱されるかと思っておりましたが」
「まぁ…そっすね」
一回死んで色々体験したからね。いや、顔には出ないだけでめちゃくちゃ驚いてるよ?今私の手汗半端ないからね。ぐっしょり濡れているからね。…そうか。こんな風にこっちにきたのな〜。じぃ、とその映像を見ていると…小さな光の玉が私の周りを浮遊している事に気が付いた。なんだ…?良く目を凝らして見て、これまた驚いた。
「まさか、セレビィ…」
「あ!カオル、知ってたんだ。うん…時渡りポケモンのセレビィ。…どうやらセレビィが君を時渡りさせたみたいなんだ」
「…ははぁ、なるほどな〜…」
これは…神様が気を利かせてくれたのかもしれない。光の中からぽん!と私が出現するより、"時渡りポケモンのセレビィ"によって私は"連れてこられた"とした方がこの世界の人に怪しまれないから。くぅ!神様の優しさに感動するぜ!未だに私の周りを浮遊する光、セレビィが突然映像いっぱいに映る。カメラに気付いていたのか?そのセレビィは綺麗に微笑んで、消えた。…あの笑顔は、多分。
「…心配性な神様だな」
「えー?何か言ったー?」
「いえ、別に…」
…ふむふむ。私がホームレスであるというのをノボリさんが知っていた理由はわかった。が、しかし、何故わざわざ連れて来られた?赤の他人なんだから、無視したら良いのに…そこがイマイチわからん。なので直接本人に聞いてみよう。
「何故、わざわざこれを私に?」
「ご自分の身に何が起こっているか、しっかり把握された方が宜しいかと思いまして」
「僕とノボリで君のこと探してた。…あんな別れ方して、心配だったし」
いや、あの時は必死だったからね。私、殺されるかと思ったからね。…まじで女子怖い。奴らは爽やかな付き合い方というものを知らんのかと常々思っている。思わず身震いして、自分の身体を両腕で抱き締める。うぅ…あんな殺気…もう味わいたくないわ。そんな私を心配してくれたのか、チラーミィとユニランが寄り添ってくれる。…うん、普段からそんなだともっと可愛いのにな。
「…大丈夫だよ。私にはお前らがいるから、大丈夫。ありがとな…」
そっと撫でながら、何度もありがとう、ありがとうと呟く。ふふ、今私はすっごく幸せだよ。…ハッ!!完璧にノボリさんとクダリさんの存在を忘れていた。す、すんません!と二人を見れば何故か無言である。なんでや!
「お、おーい。大丈夫ですか?」
「…ッ!し、失礼致しました!」
「な、なんでもない!」
「?左様です…おふぁ!!」
なんでや…なんでやチラーミィ!今さっきまでのお前は何処に行ってしまわれたのでしょうか!今すぐに帰ってこい!
「(おかしい…。わたくし…どうかしたのでしょうか…)」
「(な、なんで僕、どきどきしてるの?)」
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